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【傍聴記・米兵少女誘拐暴行公判】二次被害を強く懸念 矢野恵美(琉球大法科大学院教授)


【傍聴記・米兵少女誘拐暴行公判】二次被害を強く懸念 矢野恵美(琉球大法科大学院教授)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 被害者への配慮が足りず、二次被害が強く危惧されるような証人尋問だった。性犯罪に遭った時の被害者の一番の反応は「フリーズ」だと世界中で言われる。23日に法廷に立った被害少女は、最初の性的行為が始まった際には抵抗できなかった理由を問われ「頭が真っ白になった」と証言した。まさに「フリーズ」状態だったことを明確に述べていた。

 彼女がそう答えたにもかかわらず、弁護人のみならず、検事も裁判官も抵抗しなかった理由を問い続けた。2023年の刑法改正で、性犯罪規定は大幅に見直され、不同意性交等罪・わいせつ罪として犯罪の範囲が広がった。同意しない意思を表明できなくても性犯罪となる状況を八つも挙げた。仮に成人であっても、改正後の要件に照らせば「頭が真っ白になった」という証言は「恐怖・驚愕(きょうがく)」に当たり、不同意性交等罪・わいせつ罪に該当する。さらに彼女は「やめて」「ストップ」と何度も言ったという。これは「不同意の表明」である。

 訴訟の進行にも問題があった。尋問は休廷を含めて7時間半に及んだ。性的な行為の程度に争いがあるので、詳細を聞かざるを得ないのは理解できるが、被害者への負担は大きすぎる。また、弁護人からは被害者の容姿など、事件に関係がないと思われる質問も多かったが、検察官が異議を出したり、裁判官が止めたりすることもほぼなかった。せっかく法律が改正されたにもかかわらず、性犯罪被害者が、これまでに裁判で受けてきた苦しい状況が変わっておらず、強い衝撃を受けた。

(被害者学)