夏休みなど長期休暇明けは子どもが不登校になりやすい時期とされる。大多数が学校に行く社会で、行けない自分とのギャップに苦しむ。学校に行くのも、行かないのも、選択肢の一つ。そのままでいいんだよ―。「自分に合った場所を選んでほしい」と不登校を経験した若者が声をあげる。
居場所
大阪府富田林市の角本真菜さん(18)は中学時代、教室が窮屈に感じていた。他の生徒の私語で、授業に集中できない。注意することができず、耳をふさいだ。
学校で授業を受けたい。でも体が動かず、週1回ほどの別室登校に。多くの子が学校に行く日中に出かけても、すれ違う人に不審に思われている気分だ。高校、大学に進学し就職するのが「普通」なのに、そこから外れ、社会に取り残される気がした。「消えろ!」。枕に顔をうずめ、自分を責めた。
中学2年になり、居場所を探していた頃、見つけたのが大阪府のフリースクール「ASOVIVA!(アソビバ)」。そこでは同世代の子が楽しそうに笑っていた。その年の秋、入学を決めた。
原動力
奈良県宇陀市の男性(19)は中学1年の秋、人間関係のトラブルで不登校になった。昼夜逆転でオンラインゲームに熱中。そこでできた仲間が唯一の心の支えだった。
転機は3年生の11月。進学を考えていた頃、離婚し離れて暮らす父を訪ねると、不登校をとがめられ「高校に入学しても卒業できる保証はない」と言われた。腹は立ったが、自分の意志を見せたいと思った。翌日から学校に戻り、高校に進んだ。今は福祉系の大学で、精神保健福祉士の資格取得を目指す。「周りと同じように進学する」。それが彼の原動力だった。
選択肢
アソビバを運営する長村知愛さん(21)も小学生の時、夏休みが終わるのが怖かった。一日の終わりに宿題の日記を書くと、だんだん残りの日数が減り、学校が近づくのを実感する。布団に入ると自然と涙がこぼれた。
小学5年の冬、不登校になり、15歳で母親とアソビバを立ち上げた。「フリースクールだけがいいわけじゃない。学校が合う子もいる。あくまで選択肢の一つです。自分に合った場所を探してほしい」。子どもの選択が尊重される社会を望む。
角本さんはアソビバに通いつつ、提携する通信制高校を卒業し、今年4月から関西大に通う。アソビバの卒業式では、自作曲をギターの弾き語りで歌った。「何となくでいいんだよ」「ライフ・ゴーズ・オン(人生は続く)」。自分に合う居場所に悩んだからこそ伝えられる言葉だ。