【八重山】石垣市と与那国町の中学校教科書を選定する八重山採択地区協議会の調査員(現場教員)が、公民6社の中で育鵬社版教科書に最も多くの課題を挙げていたことが明らかになった。「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」(宮良純一郎会長)が石垣市教育委員会に情報公開請求をし、2日に開示された2024年度の調査報告書で判明した。育鵬社版は「愛国心を陽動している」など他社の教科書に比べ最も多い10点余りの批判的意見が列挙されている。
調査員は各教科に3人ずつおり、教科書を研究し課題点などを採択地区協議会に報告する。
6社のうち、採択地区協議会が8月に選定した日本文教出版(日文)を含めた4社は、活用のしやすさなど評価する意見が多くを占めた。もう1社は7点の課題と1点の評価する意見がある。
一方、育鵬社は「平和の礎の写真の掲載」と評価する意見が1点あるものの▽平和主義の学習で太平洋戦争の視点がない▽集団的自衛権の行使を限定的に容認したことに対して無批判▽愛国心がわざわざ太字▽地方自治の扱いが他社より少ない―など13点の批判的意見が挙げられている。
日文は「米軍基地の事例が扱われている」「各ページにQRコードが掲載されている」などの点が評価されている。
これまで、八重山地区の公民教科書は11年以降、4回にわたって育鵬社版の採択が続いてきた。11年7月、採択地区協議会の会長だった玉津博克石垣市教育長(当時)が採択方法を変えたことから始まった。教員ら調査員による教科書の順位付けを廃止したり、調査員の推薦がない教科書でも採択の対象になるよう規約を変更したりするなど、育鵬社を採択しやすい仕組みが整えられていった。
一転して、今回は日文が選定・採択されたことについて宮良会長は「協議会が現場の声を重く受け止めたのではないか」と一定程度評価した。その上で、前回の報告書では育鵬社の箇所が空白だったとして「過去の選定についての総括と反省が必要だ」と訴えた。
(照屋大哲)