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うとぅいむちの心 世界中から選ばれる沖縄 翁長由佳(サンダーバード代表取締役)<女性たち発・うちなー語らな>


うとぅいむちの心 世界中から選ばれる沖縄 翁長由佳(サンダーバード代表取締役)<女性たち発・うちなー語らな> 翁長由佳
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 観光に携わって30年が過ぎた。海外特派員になりたかった昔の私が、今の私を見たらどう思うだろうか。「私、頑張ってんじゃん」と思ってくれるだろうか。

 今でも世界中を飛び回り、それぞれの土地で生活をしたい。留学していたアメリカ・アーカンソー州にも行きたい。人の生きるエネルギーが満ちあふれているタイにも行きたい。その土地を知り、人々を知り、あらゆることに追われる日常から離れて、日々その土地で暮らすことだけに集中して過ごしたい。「旅」は人生の財産になる。そこに「暮らし」が伴うと、その土地は自分のおもかげや心のひとかけらを残した、また戻りたい場所になる。人生の中であとどれだけ、その想(おも)いを残せる場所に私は巡り会うのだろうか。

 今年は旅行や出張で沖縄を訪れる多くの友を案内する機会が続いている。フランス、アメリカ、全国各地から、初めて沖縄を訪れる人、毎年来沖するリピーターなど、それぞれの旅の目的も行き先もバラバラだ。また、以前よりも長期で滞在する人たちが増えてきた。動き回らず、滞在する場所でのんびりと地域との交流を楽しんでいる。

 外から訪れる人が沖縄のどこで何をしたいのか、何に感動し魅了されるのか。旅を楽しむ人たちの横にいると、沖縄の新たな魅力に気づいたり、沖縄が持つ本来の要素の素晴らしさを再確認できたりする。自然、歴史、伝統文化はもちろんのこと、個性ある施設の数々、風土に根付く食文化、そして何よりも、受け入れる人たちの屈託のない「うとぅいむち」の心。観光客が体感する旅の興奮や喜びが、沖縄で観光に携わる者としての自信や、沖縄県民であることの誇りにつながっていく。

 海を隔てて、貴重な時間もお金も消費して、それでも沖縄を旅先として選んで訪れる人たちがこんなにも多くいる。受け入れる私たち一人ひとりが、その想いを丁寧に、大切に、汲み取る存在でありたい。

 「観光客の笑顔の向こうに県民の笑顔を」。これは私が前職時代から大切にしてきた想いだ。県民がハッピーじゃない観光は、観光のあるべき姿ではない。私たちのうとぅいむちの心は、にじみ溢(あふ)れるからこそ多くの人の心を魅了する。だからこそ沖縄が、旅人たちにとってかけがえのない、想いを残した場所になる。

 人の人生に触れる観光は面白い。私にとって観光地「沖縄」の安全・安心を守る観光危機管理はもっと面白い。県民も観光客をもハッピーにする。だからこの仕事はやめられない。

翁長由佳 おなが・ゆか

 1970年生まれ、那覇市出身。大学卒業後、沖縄観光コンベンションビューローで26年間従事。2019年6月に県内初の観光危機管理に特化した「株式会社サンダーバード」を立ち上げ、危機に強い観光地の確立を目指し日々取り組んでいる。