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貴重な赤い芭蕉布も確認 オランダ人美術商が収集か ヨーロッパに渡った沖縄染織品


貴重な赤い芭蕉布も確認 オランダ人美術商が収集か ヨーロッパに渡った沖縄染織品 ヤープ・ランゲウィス氏(提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 当銘 千絵

 県立芸術大芸術文化研究所・伝統工芸研究室が欧州諸国にある6カ所の美術館や博物館で確認した染織品は、ほぼ全て戦前に沖縄から日本本土へ渡ったものだ。同研究チームの新田摂子准教授によると、オランダ人美術商ヤープ・ランゲウィス氏が日本滞在中に本土で開かれた展覧会などで買い付けていた可能性が高いという。

 特にスイスのバーゼル文化博物館は最大のコレクションを有し、約180点所蔵していた。同博物館には琉球王府時代末期頃の「芭蕉赤地絽織経縞衣装」も含まれていた。新田准教授によると、芭蕉布は一般的に糸染めをしない生成り色の地色が多いが、この衣装は赤く染色された芭蕉が使われ、さらに絽織も加えられている点で貴重だとし、当時の鮮やかな色彩を知ることのできる貴重な衣装だという。

 新田准教授は今回の調査は所蔵品そのものの性質だけでなく、ヨーロッパにおけるコレクションの形成過程に焦点を当てたことで、沖縄染織品の対外的な評価も見えてきたと説明する。また、ランゲウィス氏が単に美術品を収集していたのではなく、技術に魅了され、熱心に日本各地の絣織物の調査を行っていたことも文献資料などから分かったと指摘。「在外文化財には流出などネガティブなイメージも一部あるが、ランゲウィス氏のように、日本の染織品について深く研究した人物がいたことも知ってもらいたい」と述べた。

(当銘千絵)