かつて精神障がい者を民家の敷地内で隔離した「私宅監置」のための監置小屋が沖縄島北部に残っており、差別や人権について考える場として保存することを求める陳情が25日、県議会の中川京貴議長に提出された。監置小屋は老朽化が進んでいるが、現存するのは全国で唯一とされる。
県精神保健福祉会連合会の関係者らでつくる私宅監置遺構保存会(吉浜覚代表)が陳情した。
私宅監置は1900年に制定された精神病者監護法に基づき、精神障がい者が強制的に隔離され、適切な治療も受けられないまま放置された。制度は50年に撤廃されたが、米軍の統治下にあった沖縄では72年の日本復帰まで「動物以下」ともされる扱いが続いた。
現存する監置小屋は、空き家になっている母屋から10数メートル離れて立つ。コンクリート・ブロック積みで面積約5平方メートル。食事の出し入れ口や排せつ場があり、外から鍵がかけられた鉄の扉はさびて、崩れ落ちている。男性が53年から10年以上、治安維持を理由に閉じ込められていたという。
陳情では、小屋の保存への支援と私宅監置の歴史の検証を県に求めた。吉浜代表は「どのような状況で隔離されたか、小屋を現地で残すことに意義がある」と述べた。
(宮沢之祐)