名護市の安和桟橋前で、警備員と辺野古新基地建設に反対する市民がダンプカーにひかれて死傷した事故から、28日で3カ月になった。亡くなったのは、ダンプカーの出し方に抗議する女性を制止しようとした綜合警備保障(アルソック)グループの男性。名護在住で、当時47歳だった。
なぜ事故が起きたのか。なぜ命が奪われたのか。自分が現場にいたら、どう行動すればよかったのか。関係者は自問を続けている。
「われわれ警備員はどの様に行動すべきなのでしょうか。身をていして現場の安全を図るのか? それとも自己の安全を図るべきか?」
今月13日。アルソック労働組合の小又寛委員長はアルソックの村井豪代表らに送った要望書の中で、会社の見解を尋ねた。そして、事故原因の究明と共有、殉職した警備員の遺族への手厚い対応を求めた。
20日に、小又委員長が所属するグループ企業の人事部長を通して回答があった。「アルソックに問い合わせをしても回答する立場になく、返答を得られることはありません」
職場の安全衛生は、本社ではなく各グループ企業の問題という理屈だ。「ちなみに、当社では各種研修において受傷事故を防止するよう教育しており、身をていしての警備の提供を求めていないことは申し添えます」とあるだけで、原因究明や遺族対応には言及がない。事実上のゼロ回答だった。
小又委員長によると、アルソックでは日頃、グループ内で起きた事故は、詳細に検証して末端まで情報共有し、注意喚起と再発防止を徹底する。しかし、6月に起きた安和の事故については、周知がされない状態が続いているという。「政治的なものが絡み、大げさにしたくない心理が見え隠れする」。そう指摘する。
事故後、警備員の死を悼む声が広がり、沖縄防衛局は市民の抗議活動を「妨害行為」と位置づけ、排除に乗り出した。小又委員長は、故人や遺族を置き去りに政争の具にしてはならない、としつつ自問する。
「会社の回答通りに、もし警備員が身をていさなかったら、会社や国側はそれで良しとしたのだろうか」
(南彰)
辺野古新基地建設の土砂搬出に使われ、建設に反対する市民が牛歩で抵抗してきた安和桟橋で起きた事故から3カ月。沖縄防衛局は市民を排除し、工事の作業を進めようとしているが、工事を支えてきた関係者からも疑問の声が上がっている。信頼と安全が崩れる国策の現場を、関係者の証言から検証する。