琉球大学と理化学研究所などは30日、骨盤内の子宮やぼうこうが腟から体の外へと出てきてしまう骨盤臓器脱について、日本人女性における遺伝的素因を初めて発見したと発表した。これまで欧米人集団以外の研究はほとんどないという。琉大大学院医学研究科の前田士郎教授らは「研究を進め、遺伝的リスクを判定できれば、個人のリスクに応じた早期予防対策が可能になる」としている。
骨盤臓器脱は軽症例を含めると、出産経験がある女性の約4割に発症するという。出産回数や肥満、重い物を持つ職業などが発症につながるとされるが、欧米の研究で遺伝的素因も明らかになってきた。
発表によると、沖縄を含む日本人の骨盤臓器脱患者771人と、別の日本人集団7万6625人について、ゲノム多型と呼ばれる遺伝情報の個人差を解析。その結果、11番染色体のWT1が日本人の骨盤臓器脱リスクと強く関連すると突き止めた。WT1は欧米人集団では骨盤臓器脱と関連が薄く、日本人の遺伝的素因と認められるという。
また、日本人集団だけでなく、欧米人約57万人を加えた大規模な解析をした結果、これまでに報告がない10番染色体のFGFR2と骨盤臓器脱の関連も明らかになった。
WT1とFGFR2だけが日本人の骨盤臓器脱リスクではなく、前田教授は「さらに大規模な調査が必要」と指摘する。骨盤臓器脱の予防策としては、肥満の改善や、姿勢を保つ内部の筋肉を鍛える骨盤底筋トレーニングを挙げた。
(宮沢之祐)