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盗み強要、ばい菌扱い…教師は取り合わず ハンセン病差別、学校が助長 回復者の家族が報告 沖縄県シンポ


盗み強要、ばい菌扱い…教師は取り合わず ハンセン病差別、学校が助長 回復者の家族が報告 沖縄県シンポ 登壇者に拍手を送る来場者=18日、那覇市泉崎の琉球新報ホール(ジャン松元撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 いじめられても先生は取り合ってくれなかった―。18日に那覇市の琉球新報ホールで開かれた第1回県ハンセン病問題シンポジウム。ハンセン病回復者の家族から、学校が差別を助長してきた歴史が語られた一方、差別や偏見をなくすため学校が果たす役割への期待の声も上がった。

 両親が回復者の女性は匿名で体験談を語り、パネル討論にも登壇した。両親が隔離されていた療養所で生まれ、親戚の家を転々とした。同級生にサトウキビを盗むように強要されたり「学校に来るな」とばい菌扱いされたりしたが、教師に報告しても「仲良くしなさい」と言うだけで取り合ってくれなかった。同じ境遇の知人も学校で「近寄るな」といじめられた。教師に訴えると「仕方ないでしょ。本当のことなんだから」と返された。知人はその後、ずっとそう思って生きてきたという。

 女性は「あのときの先生は、どう思っているのだろう」と言い添えた。一方、女性は、別の教師が教室でハンセン病の正しい知識を伝えことで、いじめがなくなった事例を紹介した。

 堕胎の注射を母がされたことも明かした。「堕胎に失敗して私が生まれた。堕胎されたり、生まれても口をふさがれ殺されたり、子どもたちも被害者だ」。女性は学校で人権教育としてハンセン病問題を学ぶことを願う。

 約150人が参加した会場には沖縄カトリック高1年の生徒ら70人の姿もあった。「差別や偏見は知ることでなくなると思った」と吉田守礼さん。大浴武乃さんも「私にできることは知り、周囲にも伝えることだ」と語った。

(宮沢之祐、玉城文)


 ハンセン病 らい菌という細菌による感染症。感染力は弱く、遺伝性もない。国は明治後期から患者を強制的に収容し、完治する病気と判明してからも1996年に「らい予防法」を廃止するまで隔離政策を続け、回復者やその家族への偏見や差別が助長された。国の法的責任追及と謝罪などを求めた国賠訴訟提訴勝訴(2001年)、続く家族訴訟での勝訴(19年)を経ても差別を恐れる回復者と家族は少なくない。