漫画「社外取締役 島耕作」で辺野古新基地建設への抗議参加者がアルバイトで日当をもらっているという事実と異なる表現がある問題で、作者の弘兼憲史氏が2023年6月から防衛省広報アドバイザーを務めていることが22日、分かった。辺野古を巡る表現は、17日発売の漫画雑誌「モーニング」に掲載された。専門家は「あえて虚偽の情報を書いたのか、作品で踏み込んだことに意図はないかなど、疑念を持たれざるを得ない事態だ」と指摘している。
防衛省広報アドバイザーは、同省が広報する際のアドバイスをもらうため、著名人などに依頼している。就任は無償で、講演などで招く際、個別で謝金などを支払う場合がある。防衛省によると弘兼氏に対する支払い実績はない。
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を進める防衛省だが、この事業について弘兼氏への説明や意見交換を実施したことはないという。
安全保障論が専門の沖縄国際大学の前泊博盛教授は「防衛省の広報アドバイザーである人物が虚偽を書いてしまった。『筆の誤り』とは看過できない」と指摘。「会議などで顔を合わせば、辺野古の話が聞こえてくることもあるだろう」とし「人気作だけに影響力は大きい。検証していく必要がある」と強調した。
弘兼氏は23年7月、アドバイザーとして防衛省を訪れて、防衛装備庁の装備政策課長と懇談した。防衛省が公式Xで公表。同省によると、弘兼氏は防衛産業の現状や強化策について説明を受け、アドバイザーとして防衛省の取り組みに関する意見を述べた。
(明真南斗、玉城文)