記録的な大雨が降った北部豪雨の爪痕は深く、12日も懸命な復旧作業が各地で続けられた。県道の通行止めなど生活インフラの遮断が続く中、影響は学校現場にも出ている。農業など産業への被害も、いまだ全容が判明していない。ただ、3日間断水が続いていた大宜味村の多くの家庭に水が届き始めるなど、生活再建に向けた歩みは前へと進む。各地からのボランティアが作業に当たり、飲食店は住民に温かい食事を安価で提供した。温かい支援の輪も広がっている。 (1面に関連)
【大宜味】大雨被害に伴い9日から断水が続いている大宜味村は12日午後10時現在、村津波、塩屋などの15区で水の供給を再開した。3日間の断水に耐えた住民らは「今回ほど水のありがたみを感じたことはない」と喜びをにじませていた。村は残りの区についても、13日以降順次、供給を再開する見通し。再開した区は防災無線で発表する。
断水対策として、風呂おけにためていた水を抜いた中曽根善子さん(83)=村津波=は「やっとお風呂に入れる」と笑顔を見せた。蛇口から透明な水が出ると「うれしいね」とつぶやいた。断水中につらかったのはトイレだったという。使用後に流すため、水一杯のバケツを運ぶことが「高齢者にとって大変だった」と振り返った。
夕食の準備のために、4日ぶりに水道水を使った吉田春子さん(77)=同=は台所で目を潤ませた。3日間続いた断水では食事や洗面など、あらゆる場面で水を使うかどうかの判断に迫られた。「こうやって使えることに感謝しかない」
村によると、水の供給が再開された直後は圧縮された空気が含まれるため、白濁した水が出るが、健康に問題はないという。供給再開前には、断水に伴い配管に滞留したさびなどの汚れを流す。同作業中は赤く汚れた水が出るため、飲み水に使用しないよう呼びかけている。 (名嘉一心)
有料
生活再建へ復旧懸命 北部豪雨 水道再開「やっと風呂に」 大宜味
この記事を書いた人
琉球新報朝刊