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<評伝>吉浜忍さん 地域史に軸、教育にも情熱


<評伝>吉浜忍さん 地域史に軸、教育にも情熱 沖国大で「沖縄戦」の講義をする吉浜忍さん(2014年6月撮影)=宜野湾市の沖縄国際大学
この記事を書いた人 Avatar photo 古堅一樹

 吉浜忍先生は地域の調査や視点を大切に、市町村史や県史などを含めて長年、沖縄戦の研究や継承に尽力した。教育者としても深い情熱を注いできた。

 大学卒業後、当時22歳の社会科教員として最初に赴任したのが久米島高校。沖縄が日本に復帰した1972年だった。日本復帰した5月15日には全生徒が集合して「本土復帰」を考える討論集会が開かれた。復帰後に米軍が撤退したとしても、自衛隊が入ってくる点なども踏まえて発言し、学校全体で意見交換したという。

 当時のことについて「沖縄戦の時、日本兵が久米島住民を虐殺したことが分かっていたため、自衛隊が日本軍とダブった。生徒も教師も熱かった」と振り返っていた。自衛隊増強が続く今の沖縄にもつながる議論に、新任当時から生徒らと真剣に向き合った。

 2003~18年には沖縄国際大学で教壇に立った。私が沖国大4年次だった04年には、所属していた南島歴史学ゼミの担当教官を務めた。卒業論文で何を書くか迷っていた私に「地元の歴史から調べてはどうか」と助言した。地元に軸足を置いて調べ始めた上で、沖縄全体の中での位置づけなどへ視野を広げた。足元の歴史を大切にする姿勢は他のゼミ生にも広がった。

 21年12月には、自身の歩みをまとめた冊子「教えることは学ぶこと」を発刊した。冊子のタイトルは高校や大学で「教え」、講演やガイドで「語る」時に、常に課題を見つけて「学び」につなげることを意識したという。自らの調査・研究や教育実践などを通して教え子や若手研究者らに残した財産は大きい。

 (暮らし報道グループ・古堅一樹)