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【深掘り】土地利用規制法、県内39カ所を指定 広がる「注視」の網 規制及ぶ範囲にあいまいさ


この記事を書いた人 琉球新報社

 防衛施設や国境離島など政府が安全保障上重要とする土地の利用状況を調査、規制する「土地利用規制法」を巡り、政府は15日、県内の39カ所を区域指定した告示を施行した。内閣府が示した地図によると、与那国町では、自衛隊駐屯地周辺が土地売買契約の事前届出が必要となる「特別注視区域」となったほか、島内の大半の地域が「注視区域」に指定された。宮古島市や石垣市では海上保安庁の施設を中心に、市街地を覆うように「注視区域」となり、今後の規制の影響が懸念される。
 

■自衛隊施設周辺、国境離島が特別注視区域に

島の多くが区域指定された与那国島

 県内での適用は初めて。今回区域指定が施行されたのは石垣、宮古島、南城、粟国、南大東、北大東、伊平屋、久米島、多良間、竹富、与那国の3市3町5村。

 このうち、石垣、宮古島、南城、久米島、与那国の自衛隊施設周辺と、無人の国境離島となっている竹富町の外離島・内離島は、特別注視区域に指定された。

 注視区域では土地や建物の所有者、賃借人らの情報を政府が収集する。必要があれば所有者らから報告徴収も行われる。

 防衛関係施設のうち司令部など「特に重要」とされる防衛施設周辺などが指定される特別注視区域では、200平方メートル以上の土地売買契約は事前届け出が義務付けられる。虚偽の届け出などには6月以下の懲役か100万円以下の罰金が科される。

地元に慎重意見がありながら、南半分が注視区域となった久高島

 沖縄本島内で唯一指定された南城市は、知念高射教育訓練場周辺が特別注視区域となった。領海基線になっていることを理由として同市に属する久高島も南半分が注視区域となった。

 久高島を巡っては、琉球王国時代の「地割制」の名残で、私有地ではなく区が所有する特殊な形態になっている。古謝景春南城市長は6月の市議会で「不正な土地利用、機能阻害行為が行われることはあり得ない」などと答弁。地元からは指定の見直しを求める声が上がっていたが、結局、考慮されなかった形だ。

 粟国村でも北側半分近くが注視区域に指定された。

■年度内に米軍基地周辺も指定見通し

「特別注視区域」に選ばれた陸上自衛隊宮古島駐屯地

 内閣府は、本年度内に区域指定を終える方針。沖縄本島の領海基線や、米軍基地の周辺なども指定されるとみられる。また、国土地理院の地図データを使い、区域指定の範囲を確認できるようシステム改修を進めている。

 土地利用規制法は外国資本による土地購入に対する懸念を背景に制定された。

 一方、どのような行為が規制されるかがあいまいで、個人の思想信条にも調査が及ぶのではないかといった懸念が法案審査段階で指摘されていた。土地取引への影響も懸念されている。

生活区域に近接する米軍嘉手納飛行場。沖縄本島の米軍基地周辺も年度内の指定が見込まれる

 県と防衛施設所在27市町村でつくる県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協、会長・玉城デニー知事)は今年の要請項目で、同法の運用について新たに盛り込んだ。県内の規制区域を「真に最小限度のものとすること」を求めた。同法に基づく調査で、利用者の思想・信条に関する情報など、土地利用に関係のない情報などを収集しないことも訴えている。
 (知念征尚)