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【深掘り】顔こわばる県幹部 沖縄県、来月に「剣が峰」 辺野古めぐる法廷闘争、2訴訟で県敗訴へ


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3月に福岡高裁那覇支部判決が出た際に取材に応じる玉城デニー知事(中央)=県庁(小川昌宏撮影)

 名護市辺野古の新基地建設に向け軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更申請を県が不承認とした処分を巡り、国土交通相が県の不承認を取り消した裁決について、最高裁は24日、国交省裁決を不服とした県の訴えを不受理とした。国交省が承認を求めた「是正の指示」の違法性を訴えた訴訟も敗訴の見通し。設計変更の不承認を辺野古新基地建設阻止の「切り札」としてきた県と国の法廷闘争は剣が峰を迎える。

「厳しい判断」

 裁決を巡る判断は、過去の例もあり、県に厳しい結果が出ることは一定程度織り込み済み。ただ、「是正の指示」訴訟で弁論が認められなかったことについて県幹部は「厳しい判断だ」と述べ、顔をこわばらせた。

 設計変更の不承認を巡って初めて最高裁の判断が示される。政府関係者の一人は「防衛省、国土交通省も含めて総力を結集し、どこを突かれても耐えうる申請内容だ。これで負けることはない」と胸を張る。防衛省関係者は「長い経緯の中で認めるわけにもいかないという県の立場もあるだろう。県の出方に注目している」と語った。

 国側は次の展開も検討している。勝訴が確定しても、直ちに承認を得ることにはならないからだ。県が承認に応じなければ、国側は代執行訴訟も検討するとみられる。別の防衛省関係者は「是正の指示」に関する9月4日の判決以降を「新たなステージ」とし「県民の反応や県の態度に変化の兆しはあるのかを注視する」と説明。「説得も試みるが、歩み寄ってくれる余地がないと判断すれば国から訴訟を仕掛けるのも致し方ない」と語った。

闘い方

 「是正の指示」訴訟で敗訴した場合に県が取り得る手段は(1)変更申請を承認(2)別件で不承認(3)判断を長引かせる―の三つがある。判断が長引けば、国は県に代わって政府が承認処分を行おうとする代執行訴訟を起こすとみられる。

 県側は軟弱地盤によって設計変更せざるを得ないことが国のウイークポイントとみていた。県関係者は別件での不承認について「軟弱地盤以上にインパクトある理由を探すのは難しい」と話す。別の関係者は判決内容にもよるとしつつ「判決に従わない判断は行政としては取りづらい」と胸の内を明かす。

 是正の指示で敗れれば、進行する別の訴訟にも影響する。県が取り得る選択肢は徐々に絞り込まれつつある。別の幹部は「最後は知事の判断だ」と強調した。

 一方、与党県議の一人は「民意に支えられた県政だ。司法は闘う場の一つにすぎない。判決で諦めるほど県民はやわではない」と冷静に見る。

 民意を受け根拠も示した県の主張を門前払いし続けてきた司法の姿勢こそ「世に問われるべきだ」とも語り、地方自治をゆがめる状況を広く知らしめることも対抗手段になるとみる。

 玉城デニー知事は判決後、9月中に国連人権理事会出席のため、スイス・ジュネーブに向かう。別の与党県議は「新たな闘いの幕開けにしていく」と話した。
 (知念征尚、佐野真慈、明真南斗)