prime

【深掘り】陸自が狙う2つの目標の「同時達成」 オスプレイ新石垣空港使用へ 発表当日に米は「緊急着陸」


【深掘り】陸自が狙う2つの目標の「同時達成」 オスプレイ新石垣空港使用へ 発表当日に米は「緊急着陸」 新石垣空港に緊急着陸したMV22オスプレイの機体に上ったり、脚立を立てたりして作業する米軍=14日午後4時15分過ぎ、石垣市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊


 県内初となる陸上自衛隊オスプレイの新石垣空港飛来について、陸自は14日、正式に発表した。民間空港の利用を拡大していく狙いに一気に近づいたとみられた。防衛省は県の自粛要請を受け流す構えだったが、米軍普天間飛行場所属のオスプレイが相次ぎ、石垣を含む南西諸島の空港に緊急着陸したことで、勢いはそがれた。安全性に対する懸念が払しょくできない中で飛行を強行すれば強い反発が予想される。 

 陸自は以前からオスプレイの県内での訓練を実施したいとの考えを示していた。今回、新石垣空港への飛来を実行すれば、県内飛来という目標と、拡大を狙う民間空港の利用を同時に達成することとなる。陸自担当者は「有事を含めた任務に直結して非常に意義がある」と強調した。
 陸自は今回の訓練に当たって飛来先として複数の選択肢を検討した上で、長い距離を飛行できる石垣島を選択した。石垣島から奄美大島(鹿児島)を経由して約1250キロ先の熊本県の高遊原分屯地まで飛行する計画だ。担当者は「速く航続距離が長いオスプレイの性能を生かそうと考えた」と説明した。


 台湾有事などで影響が予想される石垣島で飛行すること自体が、自衛隊にとっては有事を想定した周辺の飛行ルートを把握し、慣れておくことにつながる。関係者によると、これら地理的条件に加え、地元の理解を得やすいと判断したことも大きい。石垣駐屯地はグラウンドが完成しておらず、広い空間がないため、着陸できる場所は空港に絞り込まれた。
 陸自は遅くとも8月末には新石垣空港を使う方針を固めて調整を進めてきた。だが、正式発表の約2時間前にオスプレイの緊急着陸が発生。防衛省関係者は「ただでさえ評判が悪く、慎重に進めてきたのにタイミングが悪い」と語った。

 県関係者は「オスプレイの事故が世界で相次ぎ、こんなに人が死んでいる。大丈夫なのか」と疑問を呈した。県はオーストラリアで発生した海兵隊機の事故に懸念を示したが、防衛省は米側の「飛行停止は必要ない」との説明を根拠に陸自オスプレイの飛行を続ける考えを示していた。「米軍が大丈夫だと言ったそばから死亡事故が起きている。日本政府も米軍の説明に追従するばかり。本当に命を大切にしているのか」
 

一方、別の県関係者は「緊急着陸は安全確保のためにしょうがない面はある」と一定の理解を示す。その上で「望ましいことではない」と話し、情報収集を進める考えを示した。
 

別の防衛省関係者は「市の反応次第では自粛せざるを得ない」と顔を曇らせた。中山義隆石垣市長は緊急着陸を受けて態度を表明しておらず、15日にも報道各社の取材に応じる。オスプレイの事故やトラブルが相次ぐ中、県内では不安が強まっており、防衛省は市民・県民の反応を注視する構えだ。  (明真南斗、知念征尚)