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【深掘り】「いつまでも待たぬ」デニー知事の国連出張中に政府が圧力 辺野古めぐり「勧告」


【深掘り】「いつまでも待たぬ」デニー知事の国連出張中に政府が圧力 辺野古めぐり「勧告」 米軍普天間飛行場の移設先として工事が進む名護市辺野古の沿岸部。奥は大浦湾=5月
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府は県に強制的に設計変更を承認させる代執行訴訟に向けた手続きに入った。玉城デニー知事による承認に期待を寄せつつ、並行して代執行手続きを進めることで、承認を促す狙いがある。一方、玉城知事が民意を後ろ盾に国連で新基地建設反対を訴えるさなか、最終手段とされる代執行に向けた手続きに入った日本政府。県内からは反発の声が上がる。

 複数の関係者によると、4日の最高裁判決から2週間たてば承認を求める勧告を行うのは当初の計画通り。政府関係者は「十分の猶予を与えた」と強調した。

手続きと期待

 ある防衛省関係者は「司法の最終判断が出たので行政としてやるべき事がある。一方で知事自身の思いや支持者の意向もあるので考えを巡らせているのだろう」と判断に時間を要していることに理解を示しつつ「とはいえ、いつまでも長々と待つわけにはいかない」と語った。

 勧告の約1週間後に期限を設けて県が承認しなければ、さらに承認を求める指示を出す。10月上旬に設ける期限内に承認しなければ代執行訴訟を提起する見通しだ。

 一方、政府内では県が判決に従って承認する可能性もあるとの観測もある。玉城知事の動向に注目しながらも、その判断に対して政府幹部らが公式の場で踏み込んだ発言をすることなどは控えてきた。

 政府関係者の一人は「法治国家で行政の責任者なのだから一部の政治勢力の意向で司法の判断をねじ曲げるのは、さすがにナンセンスだ。当然の判断をすると信じている」とくぎを刺した。

民意後ろ盾に

 勧告を受けた県だが、埋め立て承認の是非を含む今後の対応については、知事が出張中ということもありすぐには示さない見通しだ。

 県幹部の一人は勧告に対し「対応が決まっていれば言えることもあるが、まだ決まっていない」と率直に話す。

 別の県関係者は「辺野古新基地建設反対は知事の最重要公約だ。簡単に判断は下せないだろう」と早期の判断を迫る政府をけん制した。

 26日には県議会9月定例会の開会も予定される。判断を下さないまま議会に突入すれば「答弁はもたない」との見方もあり、知事の帰任後に動くことも想定される。

 玉城県政を支える与党幹部の一人は知事が沖縄の民意が無視されている状況を国際世論に訴えたばかりの状況だとし「日本政府は世界からの目を意識できていない。このタイミングでの勧告は政府の外交力欠如の証左だ」と指摘した。

 知事は今後も、ジュネーブでスピーチする日程が続く。「知事はぶれずに地方自治を守り、民意を伝えることで国際世論喚起につなげてほしい」と期待した。
 (明真南斗、知念征尚、佐野真慈)