prime

国連スピーチ「自己決定権」使わなかった理由 議論の現在地は<沖縄の訴えの波紋・知事国連訪問>下


国連スピーチ「自己決定権」使わなかった理由 議論の現在地は<沖縄の訴えの波紋・知事国連訪問>下 国連での発言について、自民県連からの申し入れを受ける玉城デニー知事(右から3人目)=6日、県庁
この記事を書いた人 Avatar photo 沖田 有吾

 「自己決定権については県民の中で十分に議論が行われていない。県民の中で丁寧な議論が積み上がってきた上で問題提起した方が、より国際的な理解が進む」。玉城デニー知事は18日の国連人権理事会でのスピーチで、2015年に翁長雄志前知事が使った「自己決定権(self―determination)」という言葉を用いなかった理由について記者団に問われ、こう説明した。翁長氏が「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」と訴えてから実に8年が経過しながら、議論を積み重ねることができなかった。

 翁長氏の発言後、自己決定権という言葉を巡り、県議会などで「県民が先住民族という前提だ」などと批判の声が上がった。豊見城市議会などで採択された意見書は「本人の発言内容や意図と関係なく『沖縄県民は先住民である』と誤った認識を世界に発信した」と批判した。今回の訪問に際しても、玉城知事に申し入れをした自民県議が「『self―determination』は、他民族に支配されている人たちが使う言葉だ」として、スピーチで使わないように求めた。

 琉球大の島袋純教授は、日本では主に「先住民族」と訳される「indigenous people」を「先住の人民」ととらえ、民族論ではなく議論をする必要があると指摘する。国連は多様な調査の結果として沖縄の人を国際人権法上の「先住の人民」に該当すると確信しているとして「今回、自己決定権を言わなかったとしても、国連は知事が否定したとは受け取らないだろう。自己決定権は当然の前提とした上で、さらに具体的な権利の侵害状況を伝えに来たと考えるのではないか」と話した。

 琉球大客員研究員の阿部藹氏は「議論が成熟していない中で自己決定権という言葉を使えば、(政府の反論などで)権利が否定されていたかもしれない。触れないことで未来に可能性を残したとも言える」と話す。

 一方で、自己決定権とは政治的、経済的、社会的、文化的な発展の在り方を自分たちで決める権利を持つことだとして「本当は8年間で議論をするべきだった。まずは水の権利のように分かりやすい権利から議論をはじめ、最終的には自己決定権についても議論を深められるようになるのが理想だ」と話し、議論を継続していくことが重要だと話した。

 (沖田有吾)