prime

【深掘り】「開いた口がふさがらない」「隠蔽に近い」の批判も PFAS流出で知事謝罪 危機意識が欠如 米軍追及の説得力損なう 


【深掘り】「開いた口がふさがらない」「隠蔽に近い」の批判も PFAS流出で知事謝罪 危機意識が欠如 米軍追及の説得力損なう  県庁の地下駐車場で発生した有機フッ素化合物を含む泡消火剤の流出について、県民に不安を与えたことや報告が遅くなったことを県議会で謝罪する玉城デニー知事=27日午前0時38分ごろ、県議会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 発がん性などが指摘される有機フッ素化合物(PFAS)を含む泡消火剤が県庁舎内で放出されていた事案が3カ月公表されていなかった。県はこれまで米軍基地由来とみられるPFAS汚染を追及してきただけに説得力を損なう失態を演じた。県政与党からも「開いた口がふさがらない」と失望の声が漏れる。事務ミスの頻発に加えて、内部統制を所管する総務部の危機意識欠如も露呈した。玉城デニー県政の足元が揺らいでいる。 

【第1報】沖縄県庁からPFAS含む泡消火剤900リットルが流出

 「県民の皆さまには多大な不安を与え、報告が遅れたことについて重ねておわび申し上げます」。26日に開会した県議会9月定例会本会議は、PFAS流出問題を契機として約8時間議会が空転。27日午前0時半過ぎ、深夜の議場で玉城知事は深々と頭を下げた。

国連で訴えるも

 県は米軍のPFAS問題を巡って、管理態勢や県への通報態勢などについて厳しく批判し抗議し続けてきた。さらに玉城知事はスイス・ジュネーブでの国連出張中に同問題について国際社会に訴えてきたばかりだった。

 野党の沖縄・自民の島袋大氏は「知事は米軍であれば一分一秒待たずに抗議に行って原因究明を求めている。自分の足元の県庁で起きたことに関しては隠蔽(いんぺい)に近いやり方をしており、言語道断だ」と糾弾した。知事の責任を徹底追及しようと、手ぐすね引いて待つ。

「最悪の対応」

 玉城知事は県として流出事案を隠す意図があったか問われ「そうではない」と否定した。ただ、宮城力総務部長は「公共水域に流出されていない点から、この水を回収し、洗浄すれば足りうるとの認識だった」などと述べ、外部流出発覚前は公表しない方針だったことを明らかにした。

 さらに県の内部統制制度では消火剤放出時点で担当部局に連絡する必要があったがこれも怠っていた。宮城部長は「外部流出の有無にかかわらず、まずは公表し、三役、関係部局とも共有すべきだった」と話した。今回のような規則では定まっていない危機事案の公表基準についても検討するとした。

 与党県議の一人は「事故はあり得ることだ。事故にあったときに素早く対応することが求められるが、最悪の対応だった」と厳しく指摘する。一方で「PFASを巡る環境問題は、自民は米軍には言い切れないのに、玉城知事には大声で迫る。米軍に対しても強く追及するべきだ。今回の問題がその契機になればいい」と話した。
 (梅田正覚、佐野真慈、知念征尚)