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【深掘り】県敗訴から1カ月 デニー知事支える全与党県議が直談判で求めたことは? 


【深掘り】県敗訴から1カ月 デニー知事支える全与党県議が直談判で求めたことは?  取材に応じる与党県議団の照屋大河団長(中央)ら=2日午後5時4分、那覇市寄宮(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、設計変更申請承認を求める国交相の指示に対し、玉城デニー県政を支える与党県議24人全員が2日、承認しないよう求める要請文を玉城知事に手渡した。同問題を巡り、最高裁による県敗訴が確定した9月4日から約1カ月。「知事の判断を見守る」としてきた与党県議団が初めて直談判に踏み切った。背景には「承認指示」期限が目前に迫り、知事にさまざまな意見が寄せられる中、玉城県政の出発点が「辺野古新基地反対の民意にある」(与党県議)ことを再確認し、承認しないよう知事を下支えする狙いがある。

■一致点

 2日午後5時過ぎ、知事公舎前には報道陣が待ち構えていた。知事との面談を終えた与党県議団団長の照屋大河県議は要請内容について「与党全員が一致した意見として知事に伝えた」と繰り返し強調した。

 知事の判断を巡り、与党内で辺野古移設反対の民意を実現するとの考えは一致していた。ただ、これまでの知事を交えた会談の場でも「不承認を貫くべきだ」との意見が出る一方、一部から「苦渋の判断」で承認した上で改めて選挙で信を問う案が出るなど、方法論は一致していなかった。

 承認期限が迫る中、1日夜になって「与党として意見をまとめ、知事に伝える必要がある」(与党県議)との考えで固まった。2日午前10時に与党代表者会議を開き「不承認」の言葉を使わず「承認しないこと」を求める要請文が作られた。

 与党県議の一人は「方法論は一度置いた。仮に知事が承認せず国が代執行の手続きを進めても、判決が出るまで時間がある。そこでもう一度話し合えばいい」と語った。

 「賠償が何百億円にもなる可能性がある」
 国交相の指示に先立つ9月26日、県庁内で非公開で行われた面談で、池田竹州副知事は集まった与党県議代表らにこう説明した。県が承認しない姿勢を打ち出すことに対する、県事務方の懸念が表出した瞬間だった。

■懸念

 与党側はその場で「(県が賠償を求められるのは)あり得ない」と指摘したが、知事が承認に追い込まれかねない、との懸念も一部で生じた。
 辺野古新基地建設事業では、過去にも損害賠償が議論になった。
 翁長雄志県政時代の2017年に県が埋め立て承認の「撤回」を検討していた際、当時の菅義偉官房長官は知事個人への損害賠償請求を「あり得る」と明言した。県内からは「脅しではないか」「県側に違法性はない」と反発の声が上がった。

 国は当時も結局、賠償請求には踏み切らなかった。こうした事例を念頭に与党県議の一人は「賠償請求をしたら、それこそ世論に大きな反発が広がる。できるわけがない」と指摘した。

 2日に行われた県政与党議員らによる要請は、こうした行政の立場からみた懸念が知事の判断に強く影響する事態を避け「政治家として、民意に沿うという根本からの判断を促す」との思惑もあった。県関係者の一人は「知事が無一文になっても新基地建設を阻止するとの意志を貫けるかではないか」と語った。 (佐野真慈、知念征尚)