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【記者解説】代執行、問われる対応 「不承認」明言するリスクを回避 行政と政治折り合い


【記者解説】代執行、問われる対応 「不承認」明言するリスクを回避 行政と政治折り合い 現段階で承認を行わない考えを表明し、報道陣の取材に応じる玉城デニー知事=4日午後5時14分、県庁(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 沖田 有吾

 大浦湾側の軟弱地盤改良工事に伴う設計変更申請について、国交相の承認指示に対して、玉城デニー知事は「期限内に承認できない」と回答した。「時間切れ」により検討が終わらなかった形を取っているが、県はこの間国に対して期限の延長を求めておらず「事実上の不承認」判断と言える。

 不承認を明言することに伴うデメリットを避けつつ、2019年の県民投票で示された埋め立て反対の民意や、自らの公約に反しない形を取った。

 玉城知事の選択肢としては(1)不承認(2)承認(3)期限内に承認、不承認の判断をしない―という3パターンが想定されていた。今回の知事の選択は、結果として国によって代執行訴訟を提起されるという点では不承認を明言した場合と同じとなる。だが、行政機関として最高裁判決という司法判断に明確に背く形になる不承認の明言には、県庁職員だけでなく与党の中にも抵抗感を示す県議がいた。

 一方で、県民投票や10年の知事選で普天間飛行場の移設先として「県外」を公約にして当選した仲井真弘多元知事、辺野古移設反対を掲げて当選した翁長雄志前知事、そして自身の2度の当選と、繰り返し示されてきた辺野古反対の民意は、政治家としての玉城知事にとって極めて重い。

 玉城知事は9月4日、県の敗訴が確定した直後の記者会見で、沖縄の過重な基地負担の軽減や普天間飛行場の危険性除去、辺野古新基地の断念を求める意思には全く変わりがないとして「政治姿勢と、行政の判断をどう整合性を取っていくか、この判断が最も知事という仕事にとっては重要だと思う」と答えていた。

 今回の選択に至るまで長く方針を表明しなかったことで、一部では不安視するような声もあったが、行政の長であり同時に政治家である知事として、折り合いを付けた形だ。

 ただ、県の置かれた状況は依然として厳しい。国は代執行訴訟の手続きに進むことが確実視されるが、迅速な審理が求められるため裁判所が一度の審理で結審し県が敗訴する可能性も十分にある。

 県として今後、どのような展望を描いているのか、知事はしっかりと県民に説明する必要がある。 (沖田有吾)

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