辺野古新基地建設に関して、軟弱地盤の改良工事に伴う沖縄防衛局の設計変更申請を承認するか否かについて、玉城デニー知事は4日、承認の是非について判断せず、事実上の不承認を決めた。4日は2018年の知事選で初当選した玉城知事が就任し丸5年の節目。玉城知事は一時、承認に傾いたとみられたが、知事を支えてきた政治サイドの動きが活発化し押し戻した。
悩み抜いた知事は新基地建設反対という「原点に回帰した」(与党県議)形だ。
両方正しい
期限を前に最後の休日となった1日、与党県議の携帯端末に照屋義実副知事からメッセージが届いた。「『不承認を決断してほしい』という要請を知事宛てにできないか」「議会が力強く支えることが、後々の展望を開くことにつながる」と与党の行動を促した。
新基地建設問題に関わる県事務方は、最高裁判決内容に不満をもちつつも「承認やむなし」論が支配的だった。賠償問題への懸念もくすぶり、面談した与党県議に玉城知事は「私に責任が来るのはいいが、職員は責任が来ないように守りたい」と吐露していたという。
転機は、9月30日に那覇市内で行われた知事と後援会幹部との面談だ。知事の厳しい表情に承認の可能性を感じた出席者の一人は「承認すると辺野古新基地反対運動も、政治家としても終わる」と懸念した。後援会幹部の一人は承認すれば辞意すると表明するなど、想定以上の反発が承認論にブレーキをかけた。
翌10月1日には野党の県選出国会議員でつくるうりずんの会のメンバーが電話で、2日には全与党県議24人が連名で、知事に承認しないよう訴えを重ね、踏みとどまらせた。
与党県議の一人は、最高裁判決には従うべきという行政職の意見も、知事当選の後ろ盾となった民意を尊重すべきだとの意見も「両方とも正しい。だから判断ができない」とおもんぱかった。
いばらの道
玉城知事が承認しない方針を固めたという報に接し、政府関係者の一人は「政治家としても、行政の長としても最低だ。司法に自ら委ねておいて守らないのか。責任放棄だ」と非難した。
想定内であるとの受け止めもあり、自民党関係者は「承認すれば政治的に死ぬ。知事としては他に選択肢がないことは分かっていた」と話した。
防衛省関係者も「驚きはない」とした上で「知事が判断した以上は、それを前提にやることをやるしかない」と語った。
知事の回答を受け、国は速やかに代執行訴訟に踏み切る。
県関係者は代執行訴訟について「最高裁判決のどこに納得ができないかではなく、決まったことになぜ従わないかが問われる。論理構成は難しい」と語り、裁判闘争の難しさを語った。年内には着工するとの見方もあり、県にとって「いばらの道」(県幹部)は続く。
翁長雄志前知事は新基地建設を巡る政府との攻防を「いばらの道」と表現。玉城知事も18年の就任会見で「いばらをかき分けた先に、県民が求めている未来が必ず見えてくる。信じて突き進む」と答えていた。
大浦湾の埋め立てに向けた代執行訴訟を前に、辺野古新基地建設は新たな段階に入る。建設阻止を目指す県政にとっては、厳しい判断が続くことになる。
(知念征尚、佐野真慈、明真南斗)