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【深掘り】「機密の塊」米無人機MQ9 反対無視し嘉手納へ移駐完了 不透明さに増す不安 沖縄


【深掘り】「機密の塊」米無人機MQ9 反対無視し嘉手納へ移駐完了 不透明さに増す不安 沖縄 嘉手納基地の南側滑走路を離陸した無人機MQ9=7日午後3時54分、米軍嘉手納基地
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 武器搭載可能な無人機MQ9の嘉手納基地移駐が完了した。MQ9は「機密の塊」(政府関係者)で他の航空機と比べて情報が開示されにくい。運用実態が県民に知らされない恐れもある。米軍や防衛省は緊急時の武器搭載の可能性も残したままだ。嘉手納基地周辺の首長や議会から反対の声が高まる中、移転を強行した格好だ。

 嘉手納基地はもともと騒音や悪臭の問題などを抱えている。期限を定めずに新しい機種が加わることになり、基地負担の増加は必至だ。

 強まる警戒感

 嘉手納町議会は10月30日、配備計画に対して抗議し計画見直しを求める意見書と決議を賛成多数で可決した。北谷町議会も基地対策特別委員会で計画撤回を求める方向性を決定。今後、本会議でも賛成多数となる見通し。両議会の意見書と決議では、一時展開だった鹿屋と異なり嘉手納配備が無期限であることを指摘している。

 嘉手納町議会の當山均基地対策特別委員長は「なぜ嘉手納なのか。協定書の締結など、鹿屋と嘉手納で(日米の)対応に差がありすぎる。今のままでは基地負担増になっている」と不信感を示す。

 首長らの警戒感も強まっている。嘉手納町の當山宏町長は10月30日、報道陣の取材に「受忍限度を超えるような運用がなされている町では、それを受け入れる状況には現時点でない」と発言し、初めて反対の姿勢を明確にした。

 北谷町の渡久地政志町長は反対姿勢を貫く。当初は容認姿勢を示した沖縄市の桑江朝千夫市長も「基地機能の強化と言える」と言及し、深夜や早朝の飛行自粛を求めた。

 見えない実態

 MQ9については一般的に明らかにされるような情報も伏せられている。一時展開していた鹿屋で1機が滑走路をオーバーランする事故があったが、原因は公表されていない。防衛省も米軍の対応を追認している。米軍が機密性を高く設定しているためだ。

 嘉手納基地での運用で何かトラブルがあった場合も、十分な情報が開示されない恐れがある。自衛隊施設である鹿屋よりも米軍の自由度が高まり、実態が見えなくなる可能性もある。こうした運用の不透明さも地元の警戒感を強める一因だ。

 武器搭載の可能性についても、米空軍は当初、嘉手納配備に関して攻撃機能を問うた本紙の取材に「弾薬搭載可能」と返答した。防衛省は鹿屋展開時に武器を搭載できない情報収集仕様だと説明しており、その点も踏まえて再質問したが米軍の回答は変わらず、本紙は日米の説明が食い違っていると報じた。

 その後、質問を重ねると、米空軍は鹿屋と同じように情報収集活動仕様となっていることを示唆したが、武器搭載機能については明確な回答を避けて否定しなかった。

 仕様を変更すれば武器搭載可能であることは、防衛省も認める。鹿屋展開時に完全否定していた武器搭載について、嘉手納配備に際しては防衛省も米軍も将来的な可能性は否定しない立場だ。

 県関係者は「政府は機体が発する騒音の小ささを強調するが『それならいい』とはならない。そもそも基地被害をまき散らし改善してこなかった米軍に対する積もり積もった不信感が周辺住民の根底にある」と指摘。「不安が不安を呼び、いつ爆発するか分からない」と指摘した。

(明真南斗、知念征尚、石井恵理菜)