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トリガー議論で野党分断 政権浮揚へ「自公国」再び   


トリガー議論で野党分断 政権浮揚へ「自公国」再び   
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信

 岸田文雄首相がガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」凍結解除を再びちらつかせ、国民民主党を引き付ける策に傾いた。生活に密着した政策テーマの協議を進展させることで政権浮揚を図るとともに、自民、公明、国民3党の連立構想をにおわせれば野党を分断できるとの思惑が透ける。減税論議に食傷気味の自民内には、財源確保の面から異論が渦巻く。

覚悟の賛成

 「トリガー条項の凍結解除も含めて、ぜひ与党と国民民主党で検討したい。検討します」

 22日午後、衆院予算委員会。首相は質問に立った国民の玉木雄一郎代表の呼びかけに呼応するように、「自公国」の3党協議を約束した。

 動きは早かった。首相は同日夕に自民の萩生田光一政調会長に検討を指示。24日朝には萩生田氏が国民の大塚耕平政調会長と会談し、協議の段取りを整えた。午後の衆院本会議で、国民は2023年度補正予算案に賛成した。

 散会後、国会内の国民控室をほくほく顔で訪れた首相。玉木氏から「覚悟を持って賛成した」とくぎを刺されると、「政策責任者でしっかり議論を進めます」と返した。

先送りの過去

 一連の首相の言動について、自民税制調査会の幹部は「急に降って湧いた話だ」と面食らう。

 自公国は22年春も凍結解除を協議したが、ガソリン販売現場の負担や機動性の問題から先送りした。自民内からは「首相は一体どういうつもりだ」と真意をいぶかる声が相次ぐ。27日の税調インナーと呼ばれる少人数会合では「議論に入るかどうかすら決まらなかった」(出席者)。

 財務省も懐疑的だ。鈴木俊一財務相は24日の記者会見で、凍結解除した場合「国、地方合計で1兆5千億円もの巨額の財源が必要になる」と難色を示した。

既視感

 首相が真剣に凍結解除を検討しているのかどうかは判然としない。10月25日の衆院代表質問では「灯油や重油が支援の対象外となる」とトリガー条項を巡る課題を列挙したためだ。

 1カ月足らずでの変遷を見た自民筋は「内閣支持率がじり貧で減税も不評の中、野党切り崩しにもつながる政策に飛び付いたのではないか」と読み解く。くすぶり続ける自公国の連立論を想起させることで、政権運営の主導権を死守したいとの狙いも見え隠れする。

 国民も難しい立場にある。今回、昨年と同様に凍結解除に言及した首相に呼応する形で、予算案採決は賛成に回った。とはいえ首相は玉木氏に言質を与えたわけではない。同じ流れでまた先送りされれば、党員らの批判は執行部に向かう。

 国民筋は「首相に利用されてデジャビュ(既視感)を覚える結果に終われば、今度こそトリガー議論を主導した玉木氏の責任問題になる」と指摘した。

(共同通信)