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【深掘り】ぶれぶれの政府・・・主体的な検証なく“弱腰”の要請 オスプレイ事故


【深掘り】ぶれぶれの政府・・・主体的な検証なく“弱腰”の要請 オスプレイ事故 オスプレイ墜落について報道陣の取材に答える木原稔防衛相=30日、防衛省
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 鹿児島県の屋久島沖で1人が死亡し、7人が行方不明となる米空軍垂直離着陸輸送機CV22オスプレイの重大事故が発生したにもかかわらず、在沖米海兵隊は30日も基本的構造が同じMV22オスプレイの飛行を続けた。一方、日本政府は米軍への弱腰な対応に終始している。「安全が確認されてから飛行するよう」要請するにとどめ、飛行の停止や自粛など米軍の運用に踏み込む表現は避けた。政府が日ごろ大切にする「日米の信頼関係」は効力を示せていない。

 事故の評価も米軍に合わせ、事故当日の29日に第一報で「墜落」だった表現を「不時着水」と言い換えたが、一転して30日は「墜落」に戻した。根拠は米軍の表現だけで、主体的に検証せず米軍の主張をうのみにする日本政府の姿勢が改めて浮き彫りとなった。

■地元の危機感

 県は事故当日の29日午後6時ごろ、溜政仁知事公室長が沖縄防衛局と外務省沖縄事務所に対し、オスプレイの飛行に対する県民の不安が高まっているとしてオスプレイの飛行停止を米軍に求めるよう口頭で求めた。その際「飛行停止については緊急性がある」として、早急に米側に伝えるよう念を押していた。

 30日には普天間飛行場を抱える宜野湾市の松川正則市長も飛行停止を要請するなど、地元からの圧力は高まっていた。

 要請後、松川市長は「朝から飛行が続いている状況を見て市民の不安も高まっている」と答え、危機感をあらわにした。

 飛行停止を要求せず「捜索救助活動を除き、飛行に係る安全が確認されてから飛行を行うよう」に要請する政府の姿勢とは対照的だった。

■あいまい表現

 2016年に名護市安部の沿岸部にMV22オスプレイが墜落した際、日本政府は安全が確認されるまでの「飛行停止」の文言を用いて飛行の「自粛」を要請し、米軍も飛行を一時的に止めた。

 政府関係者によると、29日の事故を受けて前回の表現を踏まえた上で米軍へ要請する内容を検討した。その結果、あえて飛行停止や自粛の表現は使わないこととなった。政府関係者は「安全が確認されていない状態で彼らが運用を続けるとは思えない。『厳しい安全保障環境下で日本の防衛に有用なオスプレイを止めるのはいかがなものか』という意見もある」と強調した。

 あいまいな表現にとどめたことで、米軍が飛行を停止せずとも「安全を確認した」と主張すれば、日本政府が飛行を容認する可能性がある。

 要請の表現調整に時間を要し、最初の申し入れは事故から17時間後となった。県関係者の一人は「墜落後、ずっとこの言葉をひねり出すために議論をしていたのだろうか」とあぜんとする。

 木原稔防衛相は30日夜、防衛省で取材に応じた際、米軍への要請で「飛行停止」と表現しなかった理由を問われ「捜索救助活動や人命救助というのが第一なので、そういった機体を除いて飛行の安全が確認されてから飛行するように要請した」と述べるにとどめた。

 与党県議の一人は「安全じゃなかったから墜落した。人命救助が続いている状況こそ、危険だという証左だ」と語り、飛行を容認するかのような政府の説明を疑問視した。

 (明真南斗、知念征尚、名嘉一心)