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県関係者「この予算はいらない」と言いきるワケ ぬぐえぬ懸念<振興から軍備へ・沖縄関係予算の変質>上


県関係者「この予算はいらない」と言いきるワケ ぬぐえぬ懸念<振興から軍備へ・沖縄関係予算の変質>上 国との協議に応じるよう池田竹州副知事(右)に要請する与那国町の糸数健一町長=7日、県庁
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 1972年の沖縄の日本復帰以来、沖縄振興を目的としていた沖縄関係予算に「変質」の兆しが表れ始めている。

 14日の県議会土木環境委員会。「県内12カ所の空港や港湾を自衛隊や海上保安庁が国民保護活動に備えて整備すると明確にしている。有事のみならず南海トラフ地震の懸念もある。22日に予算がほぼ確定する。今、やるべきだ」。沖縄・自民の座波一氏が、有事の際に自衛隊や海上保安庁が行う部隊展開や国民保護活動に備えて整備する特定利用空港・港湾(特定重要拠点)予算の獲得を県に迫った。

 内閣府は8月、2024年度当初予算を財務省に要望する概算要求で、沖縄関係予算とともに金額を示さずに事業項目だけを要望する「事項要求」に特定重要拠点を盛り込んだ。県内では与那国、宮古、下地島、那覇など7空港と石垣、中城など5港湾の計12施設が候補に選定されている。

 沖縄関係予算の出発点は、沖縄戦で甚大な戦災に見舞われた上、その後の27年間、米統治下に置かれた沖縄に対する国の「償いの心」だ。

 だが、復帰から半世紀を経て世代交代が進み、沖縄振興に対する原点は忘れられ、予算は「軍事」の色を帯びつつある。

 県は15日、「不明な点が残されており、引き続き調整が必要だ」として特定重要拠点の予算要望を見送った。結果、22日に発表された24年度当初予算には特定重要拠点予算は含まれなかった。

 一方、石垣市や与那国町は予算措置を積極的に要望する。国は特定重要拠点の整備に前向きな自治体と覚書を締結できれば、早くて23年度末までに予算計上することも視野に入れる。

 予算措置された場合、従来の公共工事予算が目減りするとの懸念もつきまとう。県関係者は「しわ寄せがあるくらいなら、この予算はいらない」と言い切る。

 特定重要拠点施設の維持管理や、民間事業者の利用予定を差し置いて自衛隊が優先使用する場合の補償の在り方など、「不透明な点が多い」(県幹部)。

 県幹部の一人は「島しょ県なので空港や港の整備の必要性は誰でも分かる」とした上で「安易に国の話に乗ったら、『県は軍事強化に協力している』と捉えられかねず、県民感情に相いれない。沖縄関係予算が大きく伸びるわけでもなく、期待できない」と厳しい表情を見せた。

 (梅田正覚、與那原采恵)