有料

インフラ整備、予算配分 自治体で差も <振興から軍備へ・沖縄関係予算の変質>下


インフラ整備、予算配分 自治体で差も <振興から軍備へ・沖縄関係予算の変質>下 木原稔防衛相(中央)に要請書を手渡す中山義隆石垣市長(右)、西銘恒三郎衆院議員=19日、防衛省
この記事を書いた人 Avatar photo 安里 洋輔

 「ぜひ協力したいということだった」。2024年度予算の閣議決定を間近に控えた12月19日、首相官邸に石垣市の中山義隆市長の姿があった。

 中山市長は、村井英樹官房副長官と面会し、石垣空港と石垣港の「早期の機能強化」を求める要請書を提出した。

 有事の際に自衛隊や海上保安庁の展開や国民保護活動に備えて空港・港湾を整備する「防衛力強化に向けたインフラ整備」。政府は対象となる空港・港湾を明らかにしていないが、県内では12施設が対象で、石垣空港と石垣港も含まれる。

 中山市長はこの日、木原稔防衛相、自見英子沖縄担当相とも面会し、同様の要望をした。

 政府は8月から省庁横断の関係閣僚会議を開き、インフラの運用・整備方針の策定を進めており、この会議で、インフラ管理者との間で、円滑な利用に向けた覚書を交わす方針が示された。

 石垣港は市が管理し、石垣空港は県が管理者となる点を踏まえ、中山市長は「港湾の方は先に手を付けていただきたい」と強調。来年度の予算要望を見送った県との対応の違いを際立たせた。

 関係者によると、中山市長が求めたのは空港・港湾の整備だけではない。市が台湾の基隆港と石垣港の間で定期運航することを目指す高速フェリー船について「有事の際の住民避難」に活用する計画も示したという。

 政府関係者は「おカネに色は付けられない。予算確保の機会を捉えるのは首長として自然なことだ」と話す。

 ただ、内閣府側は、概算段階で「事項」としていたインフラ関連費用について、国土交通省の予算から配分する「公共事業関係費」の枠内で執行する方針を示している。24年度の同関係費は約1262億円を計上した。内閣府幹部は「今年度末で『箇所付け』された事業については、予算を付ける場合もある」と24年度内での予算計上にも含みを持たせる。

 いち早く覚書を交わした自治体に優先的に予算配分される一方で、「軍民共用」への懸念から慎重な姿勢を取る自治体が予算配分で割を食う可能性も残る。

 一方、軍事利用の側面が強調されることに政府の警戒感もにじむ。

 24年度予算の閣議決定直前の12月18日に行われた省庁横断の関係閣僚会議。ここで、整備対象となる空港・港湾について仮称で「特定重要拠点」としていたのを「特定利用」に名称を改めることが決定。会議を所管する内閣官房の担当者は、「民生利用が主体。もっぱら防衛目的で使われるとの誤解を招かないように」と意図を明かした。

 沖縄の「自立的発展」を目指すはずが、防衛力強化ありきの沖縄振興になっているのではないか。政府が主導した「看板の付け替え」は、疑念を一層膨らませる。

 (安里洋輔)