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ソフトパワーで課題解決


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 有識者10人が取りまとめた「県の地域外交に関する提言書」は沖縄が有事に巻き込まれないようにするため、県や県民が他国の地方政府や市民団体との交流を深化させる重要性を指摘。国家間外交と異なり、地方が主体的に取り組む「マルチトラック外交」を進める必要性を提起したのが特徴だ。
 過重な基地負担に長年悩まされてきた沖縄は、国家間外交で問題を解決する難しさを実感してきた地域でもある。
 地域外交は、防衛力などを背景とした国家間外交とは異なり、人的交流などの平和的な手法が中心だ。「ソフトパワー」で軍事力といった「ハードパワー」の課題解決に役立てる期待もある。
 提言書では国内外の米軍基地所在都市と定期会議を開催し、政府や関係機関、米軍に働き掛けるなどの取り組みにつなげ「基地負担軽減に向けた具体的なアクションとして打ち出すことができる」とも盛り込まれた。
 議論の過程では地域外交という新たな任務を担える人材の育成や、たびたび県政交代が起こる沖縄の政治環境を踏まえ、一貫性をもって継続的に取り組める仕組み作りの必要性といった、行政組織や制度面での対応の必要性も提起された。
 組織面としては、県が新年度の組織編成で地域外交を担当する新部署に職員19人を配置するほか、担当統括監の設置を決めるなど、先行した取り組みも現れている。県は提言を踏まえ、3月までに地域外交基本方針を策定する予定だ。県の地域外交の深化に期待が高まっている。 (知念征尚)