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安倍派、実態解明を回避 歴代会長に責任転嫁


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党安倍派(清和政策研究会)が、政治資金パーティー裏金事件の実態解明を回避したまま解散の道を選んだ。パーティー券販売のノルマ超過分を所属議員にキックバック(還流)する慣習はいつから始まったのか。使途は何か。安倍派幹部は「知らぬ存ぜぬ」を通し、死去した歴代会長案件だとして責任逃れに終始する。

長年の慣行
 「歴代会長と事務局長との間で長年、慣行的に扱ってきた」。19日夜、党本部。西村康稔前経済産業相は記者会見冒頭、そう言い放った。西村氏は2021年10月~22年8月、事務総長として会長の細田博之前衆院議長や安倍晋三元首相を支えた。派閥運営の内情を知りうる立場にあったとみられる。
 だが、西村氏は還流がいつから始まったのか問われても「歴史は承知していない」。先立って会見した事務総長経験者の塩谷立座長は「お金や人事は会長が決めてきた」と語り、同席した高木毅事務総長は「10年ぐらい前から還流はあった」と言うものの、答えはあいまいだ。
 安倍派関係者は「リクルート事件後に三塚派に衣替えした1990年代から続いている」と証言する。別のベテラン秘書は「森喜朗元首相が会長時代にパーティー券販売のノルマが設定された。その頃から始まったのだろう」と推測した。

調査置き去り
 西村氏の前任事務総長、松野博一前官房長官を含め安倍派幹部は還流分を「還付金」と呼び、裏金とは違うと主張する。
 塩谷氏は「若い人たちに活動費として還付する、プラスになる仕組みだと認識していた」と述べ、不正な使途はないと主張した。ただ、根拠をただされると「正直、調査はできていない」とうつむいた。
 派閥解散が先行すれば、実態解明の調査が置き去りにされる可能性は高い。政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で在宅起訴された会計責任者の刑事裁判を控えていることが大きく、塩谷氏は「調査をどうするか、約束することはできない」と歯切れが悪い。

希薄な当事者意識
 安倍派幹部に共通するのは、政治資金を扱う当事者意識の希薄さだ。塩谷、高木両氏は、派閥の政治資金収支報告書を「見たことがない」。世耕弘成前参院幹事長は「資金管理は完全に秘書に任せていた」と吐露した。
 与野党では、議員への罰則を強化する政治資金規正法の改正論議が進む。公明党は、議員に対し収支報告書は「適法」と認める確認書の提出義務付けを提起。自民も議員に連帯責任を負わせる連座制を視野に入れる。
 26日召集の通常国会を控え、野党は安倍派幹部や岸田文雄首相の政治責任を追及する構えだ。