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権力基盤大きく揺らぐ 自民刷新会議 「三頭政治」大きな溝


権力基盤大きく揺らぐ 自民刷新会議 「三頭政治」大きな溝 派閥解散を巡る構図
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 岸田文雄首相(自民党総裁)の岸田派解散表明は、政権運営の要として頼る麻生太郎副総裁との間に溝を生んだ。派閥の政治資金パーティー裏金事件のけじめが必要と解散を決断した首相。誰も立件されなかった麻生派の存続を主張する麻生氏。解散に慎重な茂木敏充幹事長を含め、3人で形成する「三頭政治」にひびが入れば、首相の権力基盤が揺らぎかねない。 (1面に関連)

「従えというのか」
 「事前に相談もなく、岸田派解散を発表してしまい申し訳ありません」
 21日夜、東京都内の日本料理店。首相は神妙な面持ちで麻生氏に頭を下げた。18日に記者団に問われる形で岸田派の解散方針を表明したが、麻生氏ら党幹部には根回しをしていなかった。
 虚を突かれた麻生氏は、周辺に不快感を示していた。派閥の在り方は党政治刷新本部の会合で議論している最中だ。月内の中間報告取りまとめの前に首相が先走って派閥解散を打ち出してしまえば、流れができてしまう。従えということか―。そんな疑念が麻生氏サイドに芽生えていた。
 麻生氏の考えを伝え聞いた首相は釈明に走る。19日午後には党本部に麻生氏を訪ね「これは岸田派の問題ですから、麻生派は続けてもらっても構いません」と伝達。21日に改めて設けた一席は、誤解を解きたいという首相側の焦りの表れであるのは間違いない。

「うちで決める」
 首相が岸田派解散に踏み切ったのは、同派の元会計責任者が政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で略式起訴されたことが大きい。一方、麻生派は安倍、茂木、岸田、二階の4派閥と同様に2018~21年分の政治資金収支報告書に過少記載したと刑事告発されたが、茂木派と共に立件されなかった。麻生氏は「うちは誰も起訴されていない。解散するのは理屈が立たない」と説く。
 麻生氏と連携して動く茂木氏も「うちの派閥のことはうちで決めます」と首相に通告。茂木派関係者は「順法精神のない派閥にペナルティーを科するのが筋。『われわれは解散不要』との声が大多数だ」と息巻く。

「政権は漂流する」
 党内第4派閥の岸田派のトップだった首相にとって、第2、第3派閥の領袖(りょうしゅう)である麻生、茂木両氏との間で築いた協力態勢こそ政権安定の鍵である。それだけに関係が崩れれば、政権基盤が一気に危うくなり、目標とする9月の党総裁再選に黄信号がともる。
 首相は22日の刷新本部会合で、岸田派と足並みをそろえるよう求めなかった。麻生氏らとの間で生じた溝が亀裂に発展し「首を絞める結果になるのを避けた」(ベテラン)と言える。
 会合では、首相の岸田派解散表明に対し「順序が違う」と批判的な声が相次いだ。首相は締めのあいさつで「けじめをつけなければ、刷新本部の議論をリードすることは許されない」と訴えたが、理解を得られたとは言い難い。
 混沌(こんとん)とする党内を首相はどうまとめるのか。党三役経験者は予測する。「麻生氏と茂木氏は守旧派と見なされる可能性が出てきた。首相が先駆けた岸田派解散により三頭政治は終わり、政権は漂流するだろう」