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派閥全廃踏み込まず 主催パーティー禁止 裏金責任問題先送り 自民刷新中間報告


派閥全廃踏み込まず 主催パーティー禁止 裏金責任問題先送り 自民刷新中間報告 自民党の政治刷新本部会合であいさつする岸田首相(中央)=23日午後、東京・永田町の党本部
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、党の政治刷新本部は23日の全体会合で党改革の中間報告を提示し、了承された。派閥全廃に踏み込まず「政策集団」としての存続を容認した。本部長を務める岸田文雄首相は記者団に「派閥ありきの自民党から完全に脱却する。派閥から資金と人事を遮断する」と強調した。裏金問題に関与した安倍派議員らに関し「関係者の政治責任の在り方について結論を得ていく」とし、具体的内容は先送りした。
 野党は「非常に中途半端。事件の説明が先だ」(岡田克也立憲民主党幹事長)と批判した。自民党は改革案を26日召集の通常国会に間に合わせた格好だが、論戦を通じ事件の全容解明や改革の実効性が問われそうだ。
 首相は、解散を決めていない麻生、茂木、森山3派について「党の新たなルールに従ってもらう。いわゆる派閥ではなくなる」と記者団に説明した。政策集団に違反行為があれば「解散してもらう」と主張した。
 安倍派幹部の処分について問われ「まずは関係者に明確な説明責任を果たさせる。党としても対応を考える」とした。
 中間報告は原案にあった「いわゆる派閥の解消」の言葉を本文に入れず、見出しのみに記した。所属議員に配る活動資金「氷代」「もち代」を廃止するほか、政策集団による政治資金パーティーを禁止。例会などの活動は党本部で行うとした。
 閣僚人事などの際も政策集団の推薦は受け付けず、ガバナンス・コード(統治原則)と呼ばれる党の行動指針に書き込む。会計責任者が逮捕、起訴された場合、その団体の代表を務める国会議員を、事案の内容に応じて党が処分できるよう党則を改正すると明記した。

改革「腰砕け」

【解説】 自民党の裏金事件を受けた党改革中間報告は、派閥の事実上存続を容認した。抜本改革には程遠い内容で、国民の信頼回復に向けて、踏み込み不足と言わざるを得ない。裏金の使途解明や事件の実態把握に着手する様子も見られず、党再建の道は険しい。
 岸田文雄首相は18日にいち早く岸田派の解散を表明した。だが首相の後見人でもある麻生太郎副総裁は麻生派解散に難色を示した。政治刷新本部の議論のさなかでも、公然と「新しい集団をつくる」との発言が飛び出し、党内を二分しただけで派閥の全面解消には至らなかった。「腰砕け」のそしりは免れない。
 今回の事件では「政治とカネ」の問題が改めて浮き彫りとなったはずだ。立件が見送られた安倍派幹部の中でも、多額の還流が明らかになった。こうしたケースでの党内処分の厳格化が議論されたものの、中間報告では「政治責任の在り方について結論を得る」との曖昧な記述にとどまった。
 なぜ多額の裏金をつくるのか。どのような活動に使っているのか。私的流用はないのか―。こうした国民の率直な疑問に真正面から答えようとしていない。
 首相は中間報告了承後、記者団に「政治改革に終わりはない。私自身が先頭に立って、実行する」と宣言した。ただ、かけ声倒れと見透かされれば、国民の政治不信は頂点に達し、痛烈なしっぺ返しを受けるだろう。