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<表層深層>首相「改革」踏み込まず/野党、本気度に疑念   


<表層深層>首相「改革」踏み込まず/野党、本気度に疑念    集中審議の主なやりとり
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党派閥の政治資金パーティー問題に端を発した「裏金国会」の本格論戦が始まった。答弁で踏み込まない岸田文雄首相に対し、追及モード全開で迫る野党は「信頼回復へ火の玉になると言ったのは偽りか」と憤る。施政方針演説前の集中審議という異例の展開をたどる中、政治資金の透明性拡大は実現するのか。

すり替え

 「派閥の話にすり替えて幕引きしようとしているが、一丁目一番地は全容解明だ」
 29日、衆院予算委員会。立憲民主党の山井和則氏は息巻いた。首相が18日に表明した岸田派解散方針は、裏金事件の本質を隠す「目くらまし」というわけだ。
 「説明責任を果たすために聞き取り調査を進める」と首相。共産党の塩川鉄也氏から「全議員を対象とするのか」とただされると、「関係者から調査を始める」「範囲は限定しない」と曖昧な姿勢に終始した。
 「利権構造を保持しながら防衛ラインはどこかという戦い方を目指しているのではないか」。首相の本気度に疑念を向けた日本維新の会の藤田文武幹事長は、自民の最終的な改革案をいつ出すのかと詰めた。首相は「具体化すれば順次明らかにする」とかわした。

言質与えず

 罰則強化も論点となった。政治資金規正法への連座制導入だ。会計責任者が政治資金収支報告書への虚偽記載のような法令違反をした場合、議員も連帯して刑事責任を負うことになる。公明党と立民は導入を強く求める。しかし自民は政治刷新本部の中間報告で、連座制を明記せず、内規で処分できる党則改正にとどめた。
 公明は不満げだ。集中審議では、野党時代の自民が2010年参院選公約で「秘書への責任転嫁を防ぐため政治家の監督責任を強化する」とうたった点を取り上げ、首相に水を向けた。
 ここでも首相は「責任体制を強化する手法について真摯(しんし)に議論したい」と述べ、連立相手に言質を与えなかった。

理屈

 「約5年にわたって自民党幹事長を務めた二階俊博氏には、何と50億円を超える政策活動費が渡されている」。立民の階猛氏は「ブラックボックス」と呼ばれる政策活動費に焦点を当てた。
 政党から政治家個人に配り、受け取った政治家は使途を政治資金収支報告書に記載する必要はない。階氏は「買収など不正行為の温床になる危険がある」と主張。公明や維新、共産、国民民主の各党もそろって使途公開や廃止を唱えている。
 これに首相は「政治活動の自由そのものに関わる問題だ」との理屈を持ち出す。国民の知る権利とのバランスを考慮した上で現行制度が成り立っていると繰り返し強調。「法改正を含め議論したい」とは答弁したものの、立民は「1ミリも動かす気はないだろう」と踏む。
 集中審議後、国会内で開いた自民党役員会。幹部を前に、首相は引き締めを図った。「今後も厳しい審議が見込まれる。強い覚悟を持って共に臨みたい」