有料

能登半島地震/輪島市仮設住宅へ入居開始/「全く足りない」住民不満 


能登半島地震/輪島市仮設住宅へ入居開始/「全く足りない」住民不満  能登半島地震の被災者向けに建設された応急仮設住宅に入り、蛇口からの水に笑みを浮かべる大下澄子さん(右)と娘の尚美さん=3日午前、石川県輪島市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市で3日、被災者向けの仮設住宅への入居が始まった。地震から1カ月が過ぎたものの、完成は同市の18戸のみ。県は3月末までに県内で約1300戸の入居が可能になるとするが、応急的な住まい需要の9千戸には追い付いていない。住民からは「数が全く足りない」と不満の声が上がる。

 市役所で鍵を受け取った後、部屋に入った大下澄子さん(76)は、トイレや水道の場所などを確認した。「避難所に比べて精神的に楽。ほっとした半面、今も避難所に残っている人が気の毒だ」と話した。様子を見に来たひ孫の薬師蓮君(6)と鈴ちゃん(3)が「わあ、水が出る」と歓声を上げると、大下さんは「みんなで集まれる場所ができてうれしい」と目を細めた。
 自宅が焼失した槌谷義雄さん(82)は「震災からずっと転々と暮らしてきた。ようやく落ち着いて暮らせる」と喜んだ。
 輪島市ではこの日、4千件以上の申請の中から選ばれた住民が、観光施設「輪島キリコ会館」東側の多目的広場にできた仮設住宅へ入居を開始した。55人が住む予定。同市では2日までに548戸着工した。市は2007年の地震と比較し「今回は被害が広範囲で甚大なため、設置が間に合っていない」とし、民間用地などの確保を進めるとしている。
 珠洲(すず)市では2日までに303戸着工し、6日に40戸が初めて完成する予定。入居の1次申し込みは1478件だった。担当者は「建設業者や資材が十分ではない。さくさく進めにくい」と漏らす。
 2日時点で、県内の住宅被害は4万9440棟。県は3月末までに仮設住宅の約3千戸着工を予定している。県は賃貸住宅を借り上げる「みなし仮設」と公営住宅で住まい確保を急ぐ。1月末時点でみなし仮設と公営住宅は合わせて7割近くが県外。地元に残るのを望む人が多い現状とずれがある。
 珠洲市の仮設住宅に応募した男性(78)は「家の近くの仮設に入りたいが、数が足りないんじゃないか」と心配する。「移動が難しく、遠くだと困る」と訴えた。同じく入居申請した浜野隆夫さん(77)は「希望者みんなが入れるまでは時間がかかりそうだ。金沢に移ることも考えるが住み慣れた所からは離れづらい」と複雑な心境を吐露した。

能登半島地震の被災者向けに建設された応急仮設住宅に入り、蛇口からの水に笑みを浮かべる大下澄子さん(右)と娘の尚美さん=3日午前、石川県輪島市