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「危険」建物7割超え/珠洲の3地区 避難解消遠く


「危険」建物7割超え/珠洲の3地区 避難解消遠く 応急危険度判定された建物に張られた「危険」の紙=2日午後、石川県珠洲市(画像の一部を加工しています)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 能登半島地震で被害が甚大だった石川県珠洲市で、倒壊を免れた建物を対象とした応急危険度判定の結果、地盤が軟弱とされる正院地区など3地区で7割超の建物が「危険」と判定されたことが3日、市などへの取材で分かった。全壊して対象にならなかった住宅も他に相当数あるとみられ、避難解消への道の険しさが浮き彫りになった。
 行政側はさらに詳しい調査で被害認定し、罹災(りさい)証明書の交付を進める。
 応急危険度判定は倒壊による二次被害の防止が目的で、県内11市町の3万棟以上を対象に1月4~21日に実施。県などが派遣した応急危険度判定士が、建物内に立ち入らないよう求める「危険」、立ち入りに注意が必要な「要注意」、被災の程度が小さく使用可能な「調査済」の三つに分類した。
 珠洲市での調査は、住宅が多い南部6地区を対象に、海岸に近い4600棟で実施。うち「危険」が7割を超えたのは蛸島(76・8%)、正院(76・2%)、宝立(74・2%)の3地区。他の3地区は30%台で、地理的要因で被害に差が出た可能性がある。6地区全体は58・4%で、調査を終えた県内11市町のうち最も高い割合を示した。
 金沢大の平松良浩教授(地震学)によると正院地区は河川で運ばれた堆積物で、軟らかい地層が厚く、周期1秒ほどの揺れが増幅されやすい。隣接する蛸島地区にも影響した可能性があるという。
 正院地区は、昨年5月に同市で震度6強を観測した地震の際も多数の住宅に被害が出た。平松教授は「今回は長い時間、強い揺れが数回続いたことで、木造家屋のダメージがより大きくなった」との見方を示し、宝立地区は津波の影響も大きかったとみている。
 市の担当者は「建物の傾きだけでなく、屋根瓦が落ちる可能性なども含めて判定される。十分に注意してほしい」と呼びかけている。

応急危険度判定された建物に張られた「危険」の紙=2日午後、石川県珠洲市(画像の一部を加工しています)