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仮想敵国に「中国」初明示 日米演習 台湾有事へ強い危機感 シナリオは特定秘密か


仮想敵国に「中国」初明示 日米演習 台湾有事へ強い危機感 シナリオは特定秘密か 台湾有事の日米共同作戦計画策定の流れ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自衛隊と米軍が実施中の最高レベルの演習で、仮想敵国を初めて「中国」と明示していることが4日、複数の政府関係者への取材で分かった。仮称を用いていた過去の演習と比べ、大きく踏み込んだ想定にした。演習はコンピューターを使用するシミュレーションで、シナリオの柱は台湾有事。防衛省は特定秘密保護法に基づき、シナリオを特定秘密に指定したもようだ。数年以内に中国が台湾に武力侵攻するのではないかとの懸念は高まっており、今回の敵国名変更は日米の強い危機感の表れといえる。
 日米間には有事を想定した共同作戦計画が複数存在する。このうち、台湾有事に関する作戦計画の原案は昨年末に完成した。キーン・エッジと呼ばれる今回の演習の結果を原案に反映させ、今年末までに正式版を策定する予定。2025年ごろに部隊を実際に動かす演習(キーン・ソード)を実施し、作戦計画の有効性を検証する流れだ。
 情報が漏れた場合の反発を避けるため、自衛隊と米軍はこれまで、演習で中国や北朝鮮などを仮称にしていた上、地図も実物とは微妙に異なる架空の物を使ってきた。
 今回の演習日程は1~8日。敵国名だけでなく、地図も実物を採用している。防衛省は陸海空自衛隊を束ねる常設の「統合作戦司令部」(JJOC)を24年度に東京・市谷に設置する。演習では、実戦に沿うよう仮のJJOCを立ち上げ、米インド太平洋軍司令部との間で作戦や指揮を調整。オーストラリア軍も初めて参加しており、台湾有事にどう関与するのかを確認している。
 日米が共同で行う統合演習は1986年に始まった。日本への武力攻撃事態などへの対処が目的で、キーン・エッジとキーン・ソードをほぼ1年置きに実施している。吉田圭秀統合幕僚長は今回の演習に「特定地域を想定したものではない」と説明していた。(共同通信編集委員 石井暁)