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緊張低減させる努力を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自衛隊と米軍が実施している演習(キーン・エッジ)で、仮想敵国を「中国」と明示したのは、中国による台湾侵攻が切迫しているとの米軍の危機感があり、防衛省・自衛隊にも強い影響を与えたことが背景にある。政治は軍事に流されず、冷静に米国、中国、台湾との外交を主軸として緊張を低減させる努力を続ける必要がある。
 2021年3月、米インド太平洋軍の前司令官が台湾有事を「6年以内」と言及して以降、米軍幹部からは「米中は25年に戦うことになる」などと危機感をあおるような発言が相次いでいる。
 昨年2月、米中央情報局(CIA)長官が「習近平国家主席が27年までに台湾侵攻の準備を指示した」と明言。その後、米情報機関トップの国家情報長官も「台湾有事で27年を目標に中国が軍備加速」と続いた。
 「米軍は本気だという強いメッセージと受け止めた」。中国明示のシナリオを見た陸上自衛隊幹部が指摘する。別の幹部は「これで対中国のフェーズ(段階)が確実に一段高まった」と断言した。
 台湾有事対応を「喫緊の課題」として、正式な共同作戦計画の策定を含め急ピッチで準備する自衛隊と米軍の制服組幹部たち。軍事的合理性だけを優先する彼らの勢いに押され、中国との緊張をさらに高めてしまうことがあってはならない。(共同通信編集委員 石井暁)