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自民調査報告書の要旨 「使うと危ない」「復活させた幹部の責任」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【調査結果】
 現職議員82人と、現職議員ではない選挙区支部長3人の計85人は2020~22年に、パーティー券の販売代金のノルマ超過分について派閥から議員側への還付などがあったと認められた。ノルマ超過分について、派閥から議員側に還付されたのは53人、議員側に留保されていたのは16人、還付と留保の両方があったのは16人だった。還付金などを議員自ら認識していたのは32人で、うち清和政策研究会(安倍派)に所属していた11人は、政治資金収支報告書に記載がないことを認識していた。記載しなかった理由として、派閥からの指示や説明があったと述べた。
 【還付金の認識】
 「議員自らは当時還付金を認識していなかった」と述べた53人について、収支報告書に記載しなかった理由を「派閥事務局から秘書に対し、記載しないようにとの指示や、記載しなくてもよいとの説明があった」としたのは29人で、いずれも安倍派に所属していた。29人の中には「派閥事務局と秘書が折衝したが、収支報告書への記載は認められなかった」と述べた者もいた。
 還付金を収支報告書に記載しなかった理由には「派閥のお金という認識だった」「スタッフに任せており、通帳や帳簿のチェックが不十分だった」などが挙げられた。
 安倍派で収支報告書に記載しない取り扱いが、いつどのように始まったかは判然としないものの、遅くとも十数年前から行われていた可能性が高い。場合によっては20年以上前から行われていたこともうかがわれる。志帥会(二階派)では少なくとも10年前から今の仕組みになっていた。
 還付金を管理していたのは議員本人が12人、秘書や経理担当者は73人だった。管理方法は現金39人、銀行口座30人、現金と銀行口座12人、不明4人だった。還付金を使用していたと答えたのは53人、使用していなかったと答えたのは31人、残りの1人は受領を認識していなかったと回答した。「政治活動以外に用いた」「違法な使途に使用した」と述べた者は一人もいなかった。
 還付金の主な使途は、会合費、懇親費用、車両購入費、書籍代、人件費、通信費、手土産代、旅費・交通費、翌年以降の派閥パーティー券購入費用などだった。
 還付金を使用しなかった理由として最も多かったのは「不明朗な金銭だったから」(13人)だった。具体例として「裏金みたいなものだと思い全額を残した。(会長だった)細田博之氏に『返す』と言ったし、安倍晋三氏にも『おかしい』と言った」というものがあった。「使うと危ないと考えて現金のまま保管していた」との証言もあった。
 【対象者の所信】
 聞き取り対象者は、国民の政治不信を招いたことを謝罪し、反省の弁を述べた。大半が再発防止を徹底するべきことに触れ、法改正や外部監査など再発防止策に言及する者もみられた。
 安倍派に所属していた者の中には、派閥幹部が還付金の取り扱いを是正できず継続してしまったことへの批判や、派閥幹部の責任を問う回答も数多く見受けられた。
 具体的には以下の通り。「当選した時からこのような制度となっており、こういうものなんだと思っていた。政治家一人一人の意識改革が重要だ」「派閥のミスリードを追認してしまい、法への理解が不十分だった」「一番いけないのは、お金と政治の中で国民に不信感を与えたこと」「力のある議員に対してもおかしいことは言わないといけない」「派閥への返金手続きを早く決めてほしい」「清算後の残金は災害への寄付などに使ってもらいたい」「派閥のトップが腹を据えるべきだ」「若手より重鎮議員の危機意識が低かった」「派閥の上に立つ人間が責任を取らないといけない」「還付制度を復活させた幹部の責任問題だ」「派閥から記載するなと言われたものを記載するわけがない」
 【再発防止への提言】
 本件による政治不信は深刻を極める。再発を許さない法改正が強く望まれる。国会議員に求められる高い危機管理力を身に付けるための研さんの機会に加え、この国を良くしたいという志を果たすために必要な行動原理を確認し、外部専門家も交えて徹底的に議論する場を定期的に持つことが求められる。
 政治とカネに関する不正行為に厳罰を科すなど党としてのペナルティー強化は、国民の信頼回復のために不可欠だ。声を上げる手段の多様化・オープン化も欠かせない。外部通報窓口の設置も有効な手段だ。
 プロセスを可視化するため、業務のデジタル化推進も有効。半数を超える対象者が還付金を現金で保管していた。不透明さを生む現金が不正の温床であることを再認識し、口座振り込みの徹底、一定額以上の口座管理を義務付けるなどが求められる。