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実態解明ほど遠く


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党が派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて公表した聞き取り調査の結果は、実態解明には程遠い内容だ。安倍派や二階派などはなぜ巨額の裏金をつくり、それを何に使ったのか―。十分な説明をしようとしない逃げの姿勢は鮮明で、国民の信頼回復は難しいと言わざるを得ない。
 調査結果は焦点である裏金の使途を巡り、主なものとして「会合費」「人件費」などを列挙しただけ。どうして長年の慣習となったのかなど国民が知りたいことについては完全な踏み込み不足だ。「国政選で違法な裏金として配られたのではないか」との疑念は消えない。
 自民議員の責任感の欠如も浮き彫りになった。「経理は秘書に任せていた」「派閥のルールを踏襲した」といった発言が目についた。「自分は悪くない」との考えが透ける。あまりのお粗末さにあきれるばかりだ。
 問題はそれだけではない。自民は調査結果について、どの議員が何を答えたのか伏せた「匿名」で発表。党幹部の記者会見も事前に設定されず、説明責任を果たす重要性に繰り返し言及している岸田文雄首相の発言との矛盾は明らかだ。
 このような中途半端な内容では、首相が今後の国会審議で集中砲火を浴びるのは必至。党再生に向けた自民の覚悟が改めて問われる。