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【深掘り】うるま陸自訓練場、白紙撤回は否定、防衛省の狙いは不発か 自民からは「中途半端」の指摘


【深掘り】うるま陸自訓練場、白紙撤回は否定、防衛省の狙いは不発か 自民からは「中途半端」の指摘 玉城デニー知事(右)と会談する木原稔防衛相=17日、県庁
この記事を書いた人 Avatar photo 明 真南斗

 うるま市石川のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を整備する計画について、木原稔防衛相は白紙撤回の考えを否定した。強硬な防衛省の姿勢が改めて鮮明となった。16、17の両日に来県した際は態度を軟化させた感も見せたが、あくまで計画そのものの撤回を求める地元の要望からはほど遠く、反発を沈静化する防衛省の狙いは不発に終わりそうだ。

 木原氏は来県時、自民党県連や中村正人うるま市長からの要請を受けた形を取り、土地取得後の利用の在り方について「改めてさらなる検討」を指示。保守系議員から6月の県議選などを念頭に計画遂行を急ぐことに難色が示されたことが背景にあった。一方で石川地区自治会長連絡協議会など地元住民らの要請を受け、白紙撤回を求めた玉城デニー知事の声には応じなかった格好だ。

 20日の記者会見でも、玉城知事の要求について問われたが、知事と面談する前に県連やうるま市長と会ったことを強調。木原氏周辺の一人は「玉城知事には悪いが、自民党の大臣なので(配慮しなければならない)」と説明した。

 だが、配慮された側の自民党からも「中途半端」との指摘が上がる。同党関係者の一人は「せっかく折れに折れるなら『取得後の土地』と言わずに『白紙』と言うべきだった。結局(土地は取得するのだと見抜かれ)火は消せていない」と不満を口にした。

 防衛省としては土地を取得した場合に住民側にもメリットがある形をつくり、地元の理解を得たい考えだ。自民党県連は要請書に「市民との交友の場としての利用」という文言も盛り込んでいた。政府関係者によると、現状で「利用」の内容は定まっていない。木原氏も20日の記者会見で「幅を広げて検討する」と語っていた。少なくとも6月の県議選までは「塩漬け」(自民党関係者)になる見通しだ。

 一方、木原氏は17日の記者会見で、訓練場整備を計画するゴルフ場跡地と教育施設の距離について「実感としては確かに近いな」と口にした。防衛省関係者は「近いと言って大丈夫だったのか。土地の利用方法をいかに検討しようと、距離は変わらない」と苦笑した。

 うるま市内では3月に陸自の地対艦誘導弾(ミサイル)部隊を新編する予定で、同上旬には12式地対艦ミサイルの発射機などを搬入する計画がある。そのことも念頭に自衛隊への抗議行動が強まることを懸念する声が防衛省内にある。ある自衛隊関係者は計画に「本当にできるのか。もうなるようにしかならない」とため息をついた。

 (明真南斗)