台湾有事をにらみ政府が策定を目指す沖縄県の離島住民の避難計画原案が明らかになった。島外避難の対象は石垣島などの先島諸島を想定。米軍や自衛隊施設を多く抱える沖縄本島は対象外で、中国の攻撃対象になることへの不安が残る。12万人もの住民らを迅速に輸送する計画の実効性にも懸念が残り、課題は山積している。
政府が台湾有事に対する懸念の高まりを背景に、九州各県と山口県に受け入れ協力を求めたのは昨年10月から。この時点で、島外避難の対象に沖縄本島は含まれていなかった。
これに対し、沖縄県幹部の一人は「有事の際、中国が狙うのは沖縄本島の米軍基地や自衛隊の施設だと思う」と指摘。計画の対象に沖縄本島を含めるべきだと訴える。
策定中の計画の実効性が不透明との指摘もある。避難者には高齢者や病気の人が含まれ、迅速に移動できるかどうか見通せない。関係者によると、政府や沖縄県がこれまでに実施した図上訓練では保安検査をスムーズに通過してもらうためには空港での実動訓練が不可欠との指摘が地元自治体から出た。
計画は避難後1カ月程度の滞在を想定しているが、避難先で安定した生活が見込めなければ避難をためらう住民が出る可能性も否定できない。
政府の担当者の一人も「課題しか見当たらない」と難しさを認めており、約1年後の計画完成まで曲折も予想される。
(共同通信)