prime

【深掘り】与野党一致で見直し迫る「異例の状況」 県議選への「思惑」も 自民県連、うるま陸自訓練場計画「白紙撤回」要求 沖縄


【深掘り】与野党一致で見直し迫る「異例の状況」 県議選への「思惑」も 自民県連、うるま陸自訓練場計画「白紙撤回」要求 沖縄 開会中の県議会2月定例会=27日午前、県議会議場
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 うるま市石川の陸上自衛隊訓練場整備計画を巡り、政権与党の地方組織の自民県連が計画の「白紙撤回」に踏み込んだ。

 県議会は事実上、与野党が一致して政府に自衛隊施設の整備に見直しを迫る形となり、「南西シフト」が進む中で、極めて異例の政治状況が生まれた。ただ、6月の県議選を控えてさまざまな思惑が交錯する中で一致した側面もあり、今後の展開は不確定要素もある。

【関連】自民県連「白紙撤回を」 うるま陸自訓練場 県議会で決議の動き

 「地域の合意形成が得られていない。手順を踏んで地元に丁寧に説明をするべきだ」

 27日、県議会での「白紙撤回」発言後、報道陣の取材に応じた自民県連の島袋大幹事長はこう強調した。来県した木原稔防衛相に「丁寧な説明と検討」を申し入れてからわずか10日。島袋氏は、約10分間の会見で「地元」や「地域」を33回繰り返し、県連が地元・うるま市民の声に配慮した決断だったことを強くにじませた。

 計画が判明後、うるま市石川地域を中心に保革を超え、反対運動が高まり続けている。1日に石川地区自治会長連絡協議会が反対を決定。24日には計画断念を求め、旧石川市の元市長2氏や、元石川市議会議長・元自民県議らによる「元石川市議会議員OB会」が結成された。

陸上自衛隊の訓練場新設が計画されているゴルフ場跡地=2月6日、うるま市石川(小型無人機で大城直也撮影)

 自民県議の一人は、島袋氏が用いた「地元」という表現は「県連も含む」とした上で「国のやり方は地元の頭ごなしとしか思えない」と指摘した。国の姿勢が混乱を招いているとし「もはや収拾がつかない状況だ」と頭を抱える。地元では署名活動が広がり「反対の声が数字として目に見える形で出てくる」と強い警戒感を示した。

 県連が姿勢を強めたもう一つの背景には、6月の県議選がある。自民はうるま市区で新人2氏を公認で擁立する方針。自民関係者は「県政与党や保守系無所属候補は訓練場反対を打ち出している。これ以上、逆風にしないためにも(白紙撤回)に踏み込まざるを得なかった」と明かした。

 地元への配慮から「白紙撤回」に踏み込んだ自民県連だが、「反対」との言葉は使わなかった。
 島袋氏は報道陣の取材に対し、防衛相に「丁寧な説明と検討」を求めた「17日の主張から変わらない」などとし、計画への賛否表明は避けた。

 一方、知事周辺の一人は、OB会の立ち上げなど相次ぐ地域の動きが自民県連にとって「相当なプレッシャーになったはずだ」と語り、地域の動きが政治を動かした意義を語った。県議選後、間を空けて態度を軟化させていく可能性もあると指摘し「自民県連を折れさせない取り組みが大事だ」と語った。

 計画を巡る急展開に、防衛省関係者は「保革を超えて白紙を求められたことは重く受け止めざるを得ない」と語る。一方で「訓練場を増やす必要性は依然としてある。その機能をどうまかなうのかが解決しない限り、白紙とは言えない」と先行きの困難さを示した。別の防衛省関係者は「住民説明会を開いたということは、相当に腹をくくったということだ。今から引くのはハードルが高い」と話した。

 県議選など、政治日程を織り込んだ地元の動きに、防衛省関係者の一人は「その後も別の選挙や政治日程はある。きりがない。師団化は刻々と迫っており、早く進めたい」と語る。「計画の大幅な変更があるとすれば、木原防衛相の政治決断だ」と話した。

(知念征尚、佐野真慈、明真南斗)