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【深掘り】うるま市長、陸自訓練場計画「断念」要求 国「むげにできず、厳しい」 転換点に 沖縄


【深掘り】うるま市長、陸自訓練場計画「断念」要求 国「むげにできず、厳しい」 転換点に 沖縄 中村正人うるま市長(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 うるま市石川への自衛隊訓練場整備計画について、中村正人市長は1日、計画の「白紙撤回」を防衛局に求めた。市内外で強まる計画への反発に押され、住民の声の尊重を求めるにとどめてきた従来の立場から大きく踏み込んだ。防衛省・自衛隊が「地元の意向」と表現して重視してきた市長が土地取得の断念までを求め、陸自訓練場の整備計画は転換点を迎えた。 (1面に関連)

 中村市長はこれまで、地主などとの訴訟問題に発展する懸念があるとし、賛否を明らかにすることはなかった。2月に入り、石川地区の自治会長らが反対でまとまり、市議らにも与野党を超えて住民に寄り添う動きが出てからは、市長への取材も集中したが、記者らを避けるような言動も目立った。

 潮目が変わったのは2月27日。自民党県連が計画の白紙撤回を求める方針を示した際だ。なおも自身の賛否は示さなかったが「政権与党の下部組織が述べたのは大きい」と述べた。

 この日以降、周辺に「白紙撤回」の意向を強くにじませ、表明は秒読みに入っていた。

 自民県連、公明県本が撤回を要望したのに続く、地元市長の撤回表明だ。県内政界は保革を問わず足並みがそろった。県幹部の一人は、来県した木原稔防衛相が、市長や自民県連から地元の声の尊重や理解を得るよう要請を受けたことを理由に計画の再検討を指示したことを指摘。2者ともさらに踏み込み「白紙撤回」を求めていることに「影響は大きい。事態が動く可能性がある」と動向を注視する。

 自民党関係者の一人は「地元自治会も県連も市長も白紙にするよう求めている中で、政府も計画を実行しようもないだろう」と見る。

 防衛省幹部の一人は「基地所在市町村の首長は重要だ。むげにするわけにはいかず、厳しい」と語る。省内では計画の大幅見直しに向けた検討を加速している。土地を購入した上で訓練場以外の用途に使う案も上がっているが、中村市長は防衛施設である限り、訓練場でなくとも認めない姿勢を示しており、合致しない。

 取得した土地を市民に開放する考え方も浮上。土地購入費として予算計上した数十億円で別の土地を購入できるかも精査している。省関係者はどの案も同じ程度に課題がある横一線の状態だとしつつ「なんとか地元に理解してもらえる結論を出したい」と話した。

 (金盛文香、知念征尚、明真南斗)