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【深掘り】防衛省、本島内で代替地を模索も うるま陸自訓練場、現行地、取得困難の見方 選挙への思惑も錯綜か


【深掘り】防衛省、本島内で代替地を模索も うるま陸自訓練場、現行地、取得困難の見方 選挙への思惑も錯綜か 陸上自衛隊の訓練場新設が計画されているゴルフ場跡地=2024年2月6日、うるま市石川(小型無人機で大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 うるま市石川での陸上自衛隊訓練場整備計画について、現行の予定地では土地取得自体も困難との見方が防衛省内で強まっている。20日の市民集会など、地域一丸の反対が県全体に波及し、保革を超えた要求につながったことが大きい。一方、陸自の増強を目指す防衛省の方針は変わっておらず、現行予定地を諦めた場合でも沖縄本島内で訓練場を確保できる他の場所を探す構えだ。

高い位置

「直接、高い位置で申し入れをしている」

 20日の市民集会に組織参加はせず、議員の「自主判断」に任せると決定した自民県連の島袋大幹事長は組織参加を見送った理由をこう説明した。政権与党の地方組織として存在感を示したい思惑を言外ににじませた。

 県連は18日の木原稔防衛相との面談で、従来から踏み込んだ「断念」を求めた。自民県議の一人は、要求を強めた大きな要因に6月の県議選を挙げる。訓練場計画が持ち上がって以降、反対の声は勢いを増す。2月末には県連として計画の「白紙撤回」要求を表明。沈静化を図ったが効果は見られず、地元うるま市に続いて隣接する金武町にも懸念の声は拡大した。

 県議選では金武町を含む国頭郡区から県政与党系新人が出馬を表明し、無投票の見込みが変わった。先の県議は「こうなると影響はうるまだけにとどまらない。金武はもちろん、沖縄市など隣接地域にも及びかねない」と実情を明かす。

 防衛省の政策全般への反発につながりかねないとの警戒感も自民党内にはある。党関係者は県連が市民集会に参加しない理由について「集会の決議文は防衛省への批判が強い」と説明した。

 他の計画などへの「飛び火」を防ぎたいとの思惑は防衛省と自民県連で一致する。別の自民県議は「うるまだけで問題を終わらせることも地元を知るわれわれの役割だ」と明かした。

判断材料

 防衛省は2月から現行計画を大幅に見直す方向で再検討に入っている。石川地域で保革を超えて「計画反対」を打ち出す団体が発足し、自民県連が「白紙撤回」要求を表明したことなどを受けた対応だった。ただ、この段階で県連の要求は土地取得には言及せず「地元の声を尊重」するとして、用途見直しや住民生活への影響減を求めるものにとどまった。

 これを踏まえ、防衛省は土地を取得した上で訓練場以外の用途で使う案と別の土地に訓練場を確保する案を含め「幅を広げて」(木原氏)再検討を進めてきた。

 自民県連が土地取得断念と要請のトーンを強めたことは、「自民党の大臣」(防衛相周辺)として県連の意向を重視してきた木原氏にとって大きな判断材料となる。一方、関係者によると、土地取得の断念を含めた検討をしつつ、土地を取得した上で地元にも受け入れられる用途変更の案出しも並行して続ける。

 防衛省関係者は自民県連の要請によって「(土地取得の可能性は)厳しくなったが、まだ諦めてはいない」と語った。別の省幹部は「最後は政治判断だ」と話した。

 玉城デニー知事は19日、記者団に「『断念する』と言うまでは油断できない。防衛相が確実な判断をしっかり示すことが必要と思っている。引き続き県民とともに注視したい」と話した。

 (明真南斗、佐野真慈、知念征尚、友寄開)