政府が目的としているのは、離島の交通や物流を支えるための重要インフラの整備ではなく「総合的な防衛態勢を強化するため」の整備だと認識する必要がある。
国の「総合的な防衛体制の強化に資する公共インフラ整備」に関するQ&Aでは「米軍が本枠組みに参加することはありません」としているが、主権者である国民を欺く悪質な説明だ。例えば米軍は軍事利用を目的に石垣港へ入港し、ミサイル駆逐艦の寄港すら強行した。石垣港が特定利用港湾とされ大きな艦船も寄港できるように整備されれば、米軍が寄港することは明らかだ。
Q&Aでは「当該施設が攻撃目標とみなされる可能性が高まるとはいえません」と回答しているが、平時の軍事訓練では使用するが有事の際は使用しないなどという主張は、国際社会で受け入れられない。軍事目的で整備された空港や港湾は、有事の際にも当然利用されるとみなされ攻撃目標となるのは、歴史的にも軍事的にも常識だ。
敗戦まで国が港や空港を一元的に管理してきた反省から、日本国憲法では国に戦争をさせないという目的も含めて「地方自治」が保障された。岸田政権が進める特定利用空港・港湾の整備は、目的として「防衛」を公然と掲げ、自治体の港湾管理権や空港管理権に介入するもので、憲法の平和主義や地方自治の保障とは相いれない。
必要なインフラは、民生用にしっかり整備するべきだ。政府が自治体に対してリスクをごまかしながら軍事目的の整備を進めれば、気が付かない内に軍事化が進められてしまう。
(憲法学・平和学)