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【記者解説】沖縄の「不動産取引」に冷や水も 届け出義務、個人情報収集… 土地利用規制法31カ所


【記者解説】沖縄の「不動産取引」に冷や水も 届け出義務、個人情報収集… 土地利用規制法31カ所 米軍嘉手納基地(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉数 陽

 基地負担に重ねて、さらなる規制の網がかけられた。土地利用規制法に基づく4回にわたる区域指定で、土地の売買に県土の多くで制限がかかることになる。規制を「最小限度」とするよう見直しを求め続けた県の意見は入れられなかった。

 国は、不動産の取引自体を規制するものではなく、基地などへの「機能阻害行為」が対象だと説明するが、その定義や解釈も曖昧なままだ。

 政府は法律を根拠に区域内での土地や建物の所有者、購入者などに対して「機能阻害行為」の恐れがないか確認するため、個人情報を調べることが可能となる。調査内容の詳細は国の判断次第だ。解釈のさじ加減で規制の軽重が変わってしまうのではないかとの不安は拭えない。具体的にどういった「機能」や「行為」が法に触れ、処罰対象となるのか。犯罪行為や処罰を明確に定めなければならないとする刑法の大原則である罪刑法定主義に反することになるだろう。

 負担や解釈だけの問題ではない。那覇市の宇栄原、小禄周辺など人の往来が盛んな地域が特別注視区域に指定された。3月に公表された公示地価(1月1日時点)の上昇幅が沖縄は全国2位になるなど、不動産取引が活発化している。今回の大規模な区域指定が、旺盛な取引に冷や水を浴びせかけることになる懸念もある。

 内閣府は今回の区域指定の施行を「5月15日」とした。52年前、日本復帰を果たした日だ。過重な基地負担が続く島が迎える節目の日に、政府はまた新たな負担を強いる。

 (嘉数陽)