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日米首脳共同声明 強まる地政学的意思<佐藤優のウチナー評論>


日米首脳共同声明 強まる地政学的意思<佐藤優のウチナー評論> 佐藤優氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 岸田文雄首相とバイデン米大統領が10日午後(日本時間11日未明)、米ホワイトハウスで首脳会談を行った。その後発表された「日米首脳共同声明 未来のためのパートナーシップ」が実に興味深い。

 まず、この共同声明に「価値観」と「民主主義」という言葉が一度も出てこないことだ。未来のためのパートナーシップにおいては、民主主義という共通の価値観を基盤にするというよりも、互いの国益の極大化する均衡点を見つけるという地政学的要因が強まっている。共同声明において〈日米協力の新たな時代において、我々は、グローバルな事象がインド太平洋の安全保障と安定に影響を及ぼし、我々の共有する地域における動向が世界中に波及していることを認識する。そこで我々は、日米両国及び世界の利益のために現在及び将来の複雑で相互に関連する課題に対処するという目的に適(かな)うグローバルなパートナーシップを構築するため、あらゆる領域及びレベルで協働している。我々は、同盟協力が新たな高みに達するに当たり、パートナーシップのグローバルな性質を反映すべく関与を拡大している〉と記されている。

 インド・太平洋地域(かつての大東亜共栄圏にほぼ重なる)に日本と米国が共存・共栄できるシステムを構築していくという意思の表明だ。中国と北朝鮮は、日米による「未来のパートナーシップ」とは、21世紀型の大東亜共栄圏であるという認識を抱き、激しく反発するであろう。

 沖縄との関係ではこんな記述がある。〈日米両国は、抑止力を維持し、及び地元への影響を軽減するため、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である辺野古における普天間飛行場代替施設の建設を含め、沖縄統合計画に従った在日米軍再編の着実な実施に強くコミットしている〉。米国のバイデン政権が継続する限り、日米が辺野古新基地建設計画を変更する可能性は極めて低いということだ。沖縄が団結して、自己決定権の観点から、沖縄の民意が反対する基地建設を強行することは不可能であると主張し続けていくことが一層重要になる。

 共同声明には、〈我々は、日本の防衛力によって増進される米国の拡大抑止を引き続き強化することの決定的な重要性を改めて確認し、二国間協力を更に強化していく。この観点から、我々は、次回の日米「2+2」の機会に、拡大抑止に関する突っ込んだ議論を行うよう、日米それぞれの外務・防衛担当閣僚に求める〉との記述がある。沖縄統合計画に従った在日米軍再編の当事者となるのは沖縄だ。それが日米外交・防衛担当閣僚会合(いわゆる「2+2」)に加わっていないというのはおかしい。玉城デニー知事が次回の「2+2」にオブザーバー参加できる「2+2+1」への再編を、県と県民、さらに沖縄外に住む沖縄人が一丸となって主張していくことが重要だ。

(作家、元外務省主任分析官)