首里城南城郭の石積み修復工事について、県は12日、財務省に申請していた事業費の「事故繰越」が認められなかったと発表した。国が進める首里城正殿再建工事に伴う試掘調査が県の工事現場と重なり、県は正殿工事に支障が生じないよう、修復工事を中断していた。
事故繰越が認められず、修復工事は2023年度末でいったん打ち切りとなった。再開の見通しは立っていない。ソフト交付金を充てる石積み修復の事業費は1億3279万円を予定していた。
事故繰越は、やむを得ない理由などの「避けがたい事故」で事業費が執行できない場合に予算を翌年度に繰り越す手続き。
県によると2012年度以降、ソフト交付金事業で9件の事故繰越が認められてきた。認められなかったのは初めて。
石積み修復工事は当初22年度での完了を予定していたが、文化庁への手続きなどに時間がかかり、23年度に事業費を繰り越した。その後、正殿工事で防火水槽設置のための試掘調査が必要となり、ほぼ現場が重なることから県は正殿の工期遅れへの影響を懸念し、修復工事を中断した。23年度内で工事を完了できないとし、同年12月に財務省に事故繰越を申請した。
財務省は、正殿工事による影響を理由とした石積み工事の工期遅延は、事故繰越の要件には当たらないとし、申請を認めなかった。県担当者は「関係部局と連携して適切な対応を取る」と述べた。
玉城デニー知事は「大変残念で、財務省の対応にいささか疑問を感じる。一方、一日も早い首里城の復興は県民の願いでもあり、国と県で首里城正殿の復元に向けて緊密に協議をしていく」と話した。
(與那原采恵、石井恵理菜)