自民党安倍派の政治資金パーティー裏金事件で、2022年4月に中止が決まった所属議員側への資金還流について、当時会長代理だった下村博文元政調会長が事務局長に複数回再開を要求したと、派閥関係者が東京地検特捜部の事情聴取に供述していたことが1日、分かった。関係者が明らかにした。安倍晋三元首相(当時会長)が指示した還流中止が復活した経緯は、これまで一切明らかになっていなかった。(2面に関連)
関係者によると、派閥関係者は特捜部に対し、下村氏が事務局長で会計責任者の松本淳一郎被告(76)=政治資金規正法違反罪で公判中=に再開を要求したのは、所属議員らの反発を受けたもので、22年7月の安倍氏死去後は「生前に会長も再開を了承していた」と主張していたとも説明したという。
下村氏は今年3月の衆院政治倫理審査会で関与を否定。先月21日の共同通信の取材にも「政倫審で答えた通り再開を要求していない」と述べた。
政倫審での安倍派幹部の説明によると、安倍氏は22年4月、松本被告のほか、会長代理だった下村氏と塩谷立氏、事務総長の西村康稔氏、参院側会長の世耕弘成氏の幹部4人と開いた会議で「現金での還流は不透明で疑義が生じかねない」として還流中止を指示した。
幹部らがこれを所属議員に伝えたところ、還流を期待して同5月のパーティー券を売った議員らから抗議や相談が寄せられた。下村氏に近い衆院議員池田佳隆被告=自民除名、同罪で起訴=も強く反発した。
幹部4人と松本被告は安倍氏死去後の同8月、改めて協議し、その後還流は再開された。
(共同通信)