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【自民の戦略】必勝プラン、想定外の躍進 重点地域 組織挙げ、てこ入れ<衝撃の与野党逆転 ’24県議選>2


【自民の戦略】必勝プラン、想定外の躍進 重点地域 組織挙げ、てこ入れ<衝撃の与野党逆転 ’24県議選>2 当確が出た候補者のカードにリボンを付ける自民県連の島袋大幹事長(左)と大浜一郎幹事長代理=16日午後、那覇市の県連会館
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 県議選告示を目前に控えた5月後半。中頭郡区から自民公認で立候補した前西原町議で37歳の新人宮里洋史氏の後援会事務所に自民党県連幹部の怒声が連日のように響いた。「これは町議選ではないんだ」。革新地盤の中頭郡区で議席増をもくろむ県連にとって宮里氏の運動は満足できるものでなかった。

 県連は「確実に過半数を取るライン」(県連幹部)として自公維で25議席を設定。現職15人に加え、新人5人を公認した。うち4人は実質的には現職の後継。議席の奪還を懸けた戦いに挑むのは宮里氏だけだったが、若さと勢いを頼んでの抜擢(ばってき)だった。

 だが肝心の宮里陣営の動きが鈍い。県連は大幅なてこ入れに迫られた。県連重鎮は地元企業約60社の社長を集めて頭まで下げた。「中頭は宮里に絞ってほしい」

 関係者によると、重鎮は同じ中頭郡区の現職、中川京貴氏に当選後の議長ポストをほのめかし、宮里氏に企業票を回すよう要請。推薦を出した公明も宮里支援で自民側が納得する働きぶりを見せたという。

 組織を挙げ票固めに奔走して宮里氏は8982票を獲得。次点の社民現職と861票の僅差で滑り込んだ。新垣善春氏や新里米吉氏らが中頭で長年守り続けてきた社民の議席を徹底した組織戦術で奪取した。

 自民公認が中頭郡区で2議席を取るのは、旧中頭郡区の1992年以来32年ぶり。革新地盤に自民が風穴をあけた。

 自民は着実に勝てるプランを徹底した。中頭に加え宜野湾、沖縄両市区を重点地域とし、保守分裂で与党に利する可能性のあった宜野湾市区と名護市区で候補者を一本化した。念を入れるよう、公認2人の宜野湾に首相経験者の秘書が入り、大手ゼネコンの支店長クラスを動かすなど票固めに徹した。

 関係者によると、宜野湾市区では衆院2区支部長の宮崎政久衆院議員や松川正則市長、元市長の佐喜真淳氏にそれぞれ票の目標数を課すなど、具体的に票が積み上がる運動を展開した。

 開票が進む16日深夜、県連会館は興奮のるつぼと化した。公認20人の全員当選で自公維25議席を獲得する必勝プランを上回り、野党・中立で28議席の想定外の躍進。県連幹部も「奇跡に近い」と漏らした。

 自民と野党系無所属を合わせた総得票数は19万3860票。対する県政与党系候補者では23万246票と3万6千票あまり上回る。自民は効率的な戦略を立て、念には念を入れた徹底したてこ入れで大勝を実現した。

 自民は中立勢力と連携し、議長や常任委員会委員長の主要ポストを押さえ、予算や人事案の審議を有利に進める構えだ。県連幹部は「われわれが議会をコントロールする。知事を追い込み、2年後の知事選で県政を奪還する」と息巻いた。  

(’24県議選取材班)