23日の沖縄全戦没者追悼式後、岸田文雄首相と玉城デニー知事はそれぞれ、記者団の取材に応じた。恒久平和を願う慰霊の日だが、平和の構築を目指す手法として「抑止力」と「対話」のどちらを強調するかを巡り、両者の温度差が浮き彫りとなった。
追悼式後、記者団の取材に応じた岸田首相は、南西諸島での防衛力強化が基地負担軽減に逆行しているのではないかと問われ「地域の平和のため防衛力を強化し、不測の事態においても国民の命や暮らしを守る取り組みを進めることは大変重要」だと改めて強調した。自衛隊の強化と米軍基地の整理縮小の取り組みは「矛盾しない」とも述べ、抑止力増強に理解を求めた。
一方、沖縄戦で20万人あまりの人が犠牲となった県内では、抑止力に頼った安全保障への懸念は根強い。玉城デニー知事は追悼式後の取材に「対立をあおらず、つくらず、仕掛けず、平和的な対話による信頼関係の構築」を求めた。
米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設問題などを話し合うため、県は国に対し対話の場を設けるように求めている。
これに対し岸田首相は、普天間飛行場負担軽減推進会議の作業部会を3月に開いたことや、5月に普天間飛行場代替施設の建設に伴う影響に関する協議会を立ち上げたこを挙げ「地元の皆様方との対話を積み重ねてきた」と強調した。
一方、玉城知事は「まだ対話が必要だ」と改めて指摘。防衛力強化の一環として行われる自衛隊強化を巡って県内に賛否があるとした上で「『必ず基地負担の整理縮小を進めます』と、責任感をもって取り組むべきではないか」と語り、政府の説明を疑問視した。
玉城知事と岸田首相は式典に先立ち、非公開で10分程度面談した。玉城知事によると、政府が経済財政運営の指針とする「骨太方針」で示した沖縄経済の発展に向けて「ソフト、ハード両方の交付金をしっかりとした額でつけてほしい」などと伝えた。米海兵隊の部隊移転に関する情報を米側に求めることなども要望した。辺野古新基地については直接言及しなかったものの「基地負担軽減を実感を伴うようにやってほしい」と求めたという。
(知念征尚、沖田有吾)