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【深掘り】村、人口増や活性化に期待 北大東レーダー配備 「攻撃」懸念や「説明十分と思えない」の声も 沖縄


【深掘り】村、人口増や活性化に期待 北大東レーダー配備 「攻撃」懸念や「説明十分と思えない」の声も 沖縄 航空自衛隊移動式警戒管制レーダー配備基地のイメージ図(防衛省資料より)
この記事を書いた人 Avatar photo 田中 芳

 航空自衛隊移動式警戒管制レーダー配備計画の受け入れ意向を示した北大東村は、配備によって一定程度の「人口増加」や建設業などの「産業の活性化」につながることを期待する。一方、村民からは、日程が合わずに参加できなかったとの声や、質疑への回答が十分ではなかったとの声も聞かれる。2回の説明会で住民の理解が得られたとは言い切れない中、鬼塚三典村長は近く防衛省に受け入れを伝達する方針だ。

■前例

 北大東村の人口は、県内で2番目に少ない546人、317世帯数。人口は緩やかな減少傾向にあり、人口減少への対策が最重要課題の一つだ。配備によって常駐する自衛隊員は30人ほどだが、村は若い世代の来島を心待ちにする。

 自衛隊や米軍に対して、過重な基地負担で事件・事故なども相次ぐ本島とは異なる感情もある。本島から360キロ離れた南北大東島では、急患搬送で自衛隊への恩を感じている村民が多い。

 一方、16日の住民説明会では、基地の配備によって、有事の際に攻撃対象になる可能性を懸念する声が上がった。ミサイル部隊が追加配備される陸上自衛隊与那国駐屯地を例に、基地ができた後に強化されるのではという質問も出た。

 防衛省の担当者は「現段階で他のものを置くなどの計画があるわけではない」と紋切り型の回答に終始した。これに対して鬼塚村長は「(追加配備の)計画は無いと聞いている。住民の不安にならないレーダー配備、自衛隊配備ではないか」との見方を示した。

■貴重種

 懸案事項はそれだけではない。北大東島は貴重種の宝庫だ。防衛省は、基地整備予定地周辺に生息する「ダイトウワダン」などの絶滅危惧種の植物や希少な動物について、必要に応じて移動・移植すると説明するが、専門家は特異な環境に置かれる植物を移植する難しさを指摘する。

 村も2023年に村自然環境保護条例を改定。それまで保護対象でなかったダイトウワダンを対象とし、「損傷及び採取並びに村外への持ち出しを行ってはいけない」などと内容を強化した。にもかかわらず、鬼塚村長は「ダイトウワダンはレーダー配備予定地以外にも生息している。配備予定地にあるものは移植する」などと条例を軽視するような発言をした。

 また、8キロ離れた隣島、南大東村の住民からは「誘致による振興策は無いが、有事の際のリスクは変わらない」と不安の声がある。

 住民説明会翌日の取材で鬼塚村長は「(説明会での)住民の反応を見ても大方、受け入れに賛成じゃないか」と話した。だが村民からは「説明は十分だと思えない」という声も漏れてくる。

 (田中芳)